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北村有起哉「探偵は“時代を映す鏡”」 令和の名優が初の探偵役で目指したもの『終末の探偵』【インタビュー】

-劇中には激しいアクションシーンもありましたが、いかがでしたか。

 僕は普段から鍛えているわけではないので、体にむち打ってやりました(笑)。ただ今回は、アクションシーンになった途端、水を得た魚のようにかっこよく動き回るのも違うと思ったので、それでよかったのかなと。

-というと?

 実は今回、台本の決定稿が上がる前に「泥くさいアクション」ということが決まっていたんです。けんかに強いわけではないけど、決して諦めない。相手のパンチをシュッとかわして、カウンターでパーンと倒すのではなく、急所を狙ったりして、相手が最も嫌がるやり方をする厄介なやつ。そういうイメージのアクションを、アクション監督の園村(健介)さんが作ってくれていたので、すごくいいガイドになりました。

-確かに、新次郎の必死さが伝わるアクションでした。ところで、先ほど「社会性がある作品」とおっしゃっていたように、本作では外国人労働者の問題なども扱っています。エンターテインメントと社会性の両立についてはどう考えていますか。

 何も知らずにやって、「そんなことがあったんだ」と作品を通して知る方法もありますが、やっぱり最低限知っておいた方がいいものはあります。例えば、以前、トランスジェンダーの役をやらせてもらったことがありますが、昭和の時代だったら、もっとオーバーに「やだー!」とかやっていたのかもしれません。でも、今の時代にそんなことをやるわけにはいかない。そのときも、「台本通りにやると、誤解されるのでは…?」と感じたことについては、僕の方から芝居を提案させてもらった部分もあります。だから、ジェンダーの問題も含め、世界がどう動いているのかをきちんと知っておくことは大切じゃないのかなと。

-なるほど。

 しかも、表面的な部分だけではなく、描かれていない心情みたいなものを提示するのも、僕に求められている役割だと思っています。「そこまで掘り下げてくれるんだ」と思わせてこそ、次の仕事につながるんじゃないのかなと。そういうことを考えるには、自分なりにアンテナを張っておくことが必要。だから、ただ単に「せりふを覚えて、芝居をして…」というわけにはいきませんよね。

-北村さんが活躍している理由の一端が分かった気がします。

 僕自身、勉強不足な部分はまだまだたくさんあります。でも、なるべく世の中とつながっているようにしたい。「なぜ今、この時代に探偵を?」と聞かれたとき、「僕なりにこういう考えで取り組ませてもらいました」と、きちんと答えられるようにしておきたいですから。ハリウッドを見ていると、子役ですら自分の考えや作品のテーマをはっきり語っていて、すごいですよね。その辺をオブラートに包みがちな日本とは国民性の違いがあるにしても、やっぱり普段の心構えが大切なんじゃないかなと。僕ももういい年ですし、そのぐらいのことはきちんとできるようにしたいです。

(取材・文・写真/井上健一)

(C)2022「終末の探偵」製作委員会