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伊藤沙莉、俳優業は天職「ゴールが見えないから諦め切れないし楽しい」 映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』【インタビュー】

 伊藤沙莉が主演する映画『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』が6月30日から公開される。本作は、“アジア最大の繁華街”と称される新宿・歌舞伎町を舞台に、誰にも言えない秘密を持つ探偵・マリコが、FBIから行方不明になった地球外生命体の捜索を依頼されるという奇想天外な探偵エンターテインメント。日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『ミッドナイトスワン』などで知られる内田英治監督と、佐藤二朗主演の『さがす』などが話題を呼んでいる片山慎三監督が、6つのエピソードを分業し、1本の映画として作り上げた。伊藤に撮影の裏話や見どころ、さらには俳優業への思いなどを聞いた。

伊藤沙莉(ヘアメーク:岡澤愛子/スタイリスト:吉田あかね) (C)エンタメOVO

-映画作品で、2人の監督が分業するという異色作ですが、そうした企画を聞いたときの気持ちを教えてください。

 もしかしたらそういう作品はほかにもあるのかもしれませんが、私はとても新しい試みだと思いました。さらにこのお二人のタッグというのがすてきだなと。内田監督とは「全裸監督」でご一緒しているのですが、再びご一緒できるのがすごくうれしいですし、片山監督ともずっとご一緒したかったので楽しみでした。お二人が作り上げる作品の空気感は、うそがなく、バイオレンスな要素もあるけれども、どこか包み込んでくれる優しさがある気がして、私は大好きなんです。演じていて楽しかったです。

-それぞれの監督のディレクションの違いはどう感じていましたか。

 それぞれのエピソードに(マリコの働くバーや探偵業の)お客さんが登場しますが、そのお客さん同士で作り上げるシーンは、監督それぞれの特徴が垣間見えていると思いますが、マリコに対してのディレクションは共通していたように思います。お二方とも段取りでやったお芝居を尊重してくださり、あまり細かい指導はなく、自由にお芝居をさせてくださいました。遊び心があるお二方なので、「伊藤がこうくるなら、こうしよう」とうまく誘ってくださり、遊ぶところは遊び、シリアスなところはシリアスにというそのあんばいがとてもすてきだなと思いました。

-マリコという人物をどのように捉えて演じていましたか。

 人がすごく好きで、冷静なところもあるけれど、意外とがむしゃらに生きている。矛盾しているような行動の中にも一つの軸があるところが彼女の魅力だと思います。衝撃的な過去を抱えていますが、そうした過去があるから特別なキャラクターだということではなく、一般的な人よりは大きな荷物を抱えた子と思って演じました。

-伊藤さんと共通点はありましたか。

 「自分が覚悟するより先に大人にならなくてはいけなかった」ということが共通点なのかなと思いました。彼女は幼少期の頃に、大きなものを背負わされますが、私自身も9歳からこのお仕事をさせていただいたので、子どもでいたくても子どもでいられない瞬間もあったなと、今振り返ると思います。まだ子どもなのにしっかりしなくてはいけないことで、ある種、図太くもなれたのかなと。

-本作では、6つのエピソードで物語がつづられます。どのエピソードもインパクトが強いですが、伊藤さんはどのエピソードが印象に残っていますか。

 北村有起哉さんが落ちぶれたやくざの戸塚を演じている「鏡の向こう」です。一番、胸がギュッとなったお話でした。終わり方もそうですし、一番過去にとらわれているのが戸塚だと思います。すごくつらいストーリーですが、リアルにある話なんだろうなとも思いました。娘役の藤松祥子ちゃんも大好きな女優さんなんですよ。彼女のせりふの言い方もとてもリアルで、「見たことはないけど、絶対にこういう人いるよね!」という絶妙な演技をされていて、お父さんとすれ違う姿は切なかったです。

-では、撮影で思い出深いシーンは?

 物語のクライマックスで、宇宙人を追ってきたやくざたちが対立するシーンです。「これは何を撮っているの?」と思いながら、とにかく楽しく撮影しました。それぞれのエピソードはすごくリアリティーがある人間模様を描いているので、宇宙人のパートはどのシーンも楽しかったです。