-ところで、今年、古希を迎えられました。改めて50年以上にわたる俳優人生を振り返り、今、どんな思いですか。
葛飾北斎は70歳になって、「今までの俺は何をやっていたんだ」と思い、そこから名作を残します。僕も同じことを言いたい(笑)。70からです。僕も北斎のように生きたい。まだまだ人生これからです。
-では、今後はどのような活動をしていきたいですか。
今の10代や20代の子たちに注目していきたいと思っています。いつか、そうした人たちを演じたい。その世代の子たちは、もちろん戦争も知らないし、左翼の内ゲバも知らないし、サリン事件だってかろうじて知っているかどうか。でも、彼らは彼らでネガティブな時代を生きています。そして、彼らの根底に流れているのは“自由”なんじゃないかと思います。それは、自分主義に陥るということではなく、もっと根底にあるもののような気がします。その自由の触覚をどこに伸ばしていいのか分からない彼らの姿を演じたいと思っています。具体的に今、誰ということではないので、今後、そんな人に出会いたい。出会うんじゃないかという気がしています。
-改めて、尾形さんにとって一人芝居とは?
死ぬまでの相棒かな(笑)。これをやっていなければ意味がないと思いますし、意味があるから一人芝居をやっている。自分と一体化しているのかなと思いますし、そうでありたいとも思います。どんなときでも一人芝居です。ただ、これから先、立てなくなるときはくると思います。なので、そのときには、自分の分身となる人形を作って生きていこうと思います(笑)。
(取材・文・写真/嶋田真己)
「イッセー尾形一人芝居 妄ソー劇場・すぺしゃるvol.4」は、12月22日~24日に、都内・有楽町朝日ホールで上演。「イッセー尾形10年ぶりの福岡公演!『生きとったと。』笑」は、2023年1月14日・15日に、福岡・天神西鉄ホールで上演。
公式サイト https://issey-ogata-yesis.com