-母娘としての信頼関係ができていないと難しいお芝居だと思いますが、常盤さんとはそういう関係をどう作り上げていったのでしょうか。
常盤さんとは、衣装合わせなどでお会いしていたんですけど、きちんとお話しできたのは現場に入ってからだったんです。ただ、現場に来てくださったときから、「関西のおかん」という雰囲気をすごく感じて。現場中もたくさん面倒を見ていただきましたし、娘として入りやすい雰囲気を作ってくださったのが大きかったです。
-本作では、幼なじみの川柳光輝に対する千夏のほのかな恋心も描かれています。光輝役の奥平大兼さんとの共演はいかがでしたか。
撮影に入る前に、監督を含めた3人でワークショップをするなど、事前にコミュニケーションを取る時間はあったので、「初めまして」で緊張することもなく、いい距離感でお芝居できたと思います。奥平さんは私より一つ年下なんですけど、堂々としていて、自分の芯がきちんとある方で、人間として憧れる部分もあったので、休憩中には奥平さんの持っている演技の価値観など、いろんなお話を聞くことができました。勉強になることが多く、改めてすごい俳優だなと。
-お二人のお芝居もとてもすてきでした。ところで、乳がんは「女性の病気」というイメージが強いこともあり、最初にこの映画の話を聞いた時、男性がそこに立ち入っていいのか、少しちゅうちょしました。そういう男性は少なくない気がしますが、男性の観客を意識する部分はありましたか。
私自身はあまり気にしていませんでした。ただ、ワールドプレミアなどでご覧いただいた男性の方から、「良かった」という感想をたくさん頂けたのはうれしかったです。
-この映画の監督も脚本家も男性ですし、決して乳がんを題材にした「難病もの」の映画ではないので、多くの男性にも見てもらえるといいですね。なお、この作品をはじめ、23年は吉田さんの活躍の場がさらに広がりそうですが、今後への意気込みを聞かせてください。
この映画で昨年の東京国際映画祭に参加させていただきましたが、人生に一度しかない初主演映画で、そういう経験をさせていただき、私自身、スタッフやキャストの皆さんにすごく恵まれたと思っています。この映画のほかにも、今年は主演映画が公開予定なので、このチャンスを無駄にしないように、今年もいろんな役を経験して、いろんなことを吸収していける年にしたいと思っています。
(取材・文・写真/井上健一)