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なだぎ武、話題を呼んだアクションコメディー映画の舞台版出演に人生が変わった分岐点を感じる【インタビュー】

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 お笑い芸人としてだけでなく映画・ドラマでも活躍し、ミュージカル「魔女の宅急便」や「風都探偵 The STAGE」など舞台にも数多く出演しているなだぎ武。1992年にウッチャンナンチャンの初主演で話題を呼んだアクションコメディー映画『七人のおたく cult seven』の初舞台化作品となる「七人のおたくcult seven THE STAGE」で、フィギュアおたくの丹波達夫を演じる。なだぎに、原作映画への思いや、本作への意気込みや見どころなどを聞いた。

なだぎ武

-映画『七人のおたく』が舞台化されると聞いたときは、どう感じましたか。

 30年前は、おたくに対して今みたいに理解度があまりない時代だったので、おたくは文化の一つであるという見られ方をしている現代に、当時の作品を持ってきてどうなるのかなと思いました。ただ、時代背景は90年代そのままでやるので、当時のおたく文化のことを知らない、今のおたくの人に、当時はこういう感じだったんだという思いで見てもらえたらうれしいです。

-観客の受け方や捉え方も、映画の平成初期の時代とは違うのかもしれませんね。

 そうですね。原作者の一色(伸幸)さんは、当時発生した、とある殺人事件の影響で、おたくは危険な人物だというイメージが広がったので、そのイメージを払拭したいという思いもあったから、あの物語を作ったそうなんです。確かに、30年の時を経て、おたくに対してまるっきりイメージが変っている時代になっているんだと、感慨深い気持ちもあります。そして、改めてそういう時代を知らない人たちに、こんな時代だったんだと伝えたいですし、当時を知っている人には、懐かしさを感じてもらいたいです。

-原作となった映画についての思い出は?

 僕もおたく寄りの人間なので、日本映画の柱でもあるような『七人の侍』をオマージュして、当時の社会が避けていたおたく文化を持ってくるというのは見せ方としてうまいと思いました。それにウッチャンナンチャンさんが主役でおたくをやるということで、余計に見たいと思って見に行きました。

-フィギュアおたくとして出演が決まったときの心境は?

 僕もフィギュアが好きで、当時の90年代初期からずっと集めているので、もう役作りはいらないかなと思いました(笑)。そのままでという感じで、ほぼ素でできるなと(笑)。

-舞台版ならではの魅力は?

 演出の元吉(庸泰)さんが演劇的に作りたいとおっしゃっていて、例えば、映画のシーンで、格闘技おたくが門を蹴破って屋敷に入るシーンがあるんですけど、その門をアンサンブルの人たちが表現するんです。そういう演劇的な表現によって、舞台ならではのものがたくさん入っているので、映画を知っている人でも新鮮な気持ちで見られると思います。本当に役者のアナログ的な人間力で見せていくという感じで、役者のエネルギーが常に充満している舞台になりそうです。

-演じる役柄の魅力は?

 丹波は、島の有力者の高松の下で密漁の手伝いをしていて、夢はもうないけど、お金回りだけはいいみたいな、おたくを卒業した人間です。そういう生活の中で、煮えたぎらないものがずっと自分の中にあったことで、事件を解決しようと思っているおたくたちに感化されて、また自分のおたく熱が再点火するんです。僕の中でも諦めていたんだけど、人との出会いによって目覚めることができたというような人生の分岐点があったので、そういう熱い思いに改めて気付かせてくれる役でもあります。

-なだぎさんにとってのその分岐点とは?

 まさに僕が東京の仕事をやらせていただくようになったきっかけでもある、第5回R-1グランプリの時にやったディラン・マッケイです。海外ドラマ「ビバリーヒルズ高校白書」シリーズに登場するキャラクターのネタで、当時、付き合っていた彼女の前だけでやっていて、彼女は笑ってくれるけど、舞台ではどうかと思って披露していなかったんです。だけど、2005年に関西の「オールザッツ漫才」で、滑ってもいいから自分のやりたいキャラクターをやってほしいというオファーがあって、「滑ってもいんだったら、めっちゃあるけど!」みたいなことで、ディランをやったんです(笑)。それが予想以上にウケて、いろんな番組からディランでオファーされることが多くなるという、自分でも思っていなかった展開になったんです。それから、R-1グランプリも近いし、ネタを作ったらどうかと作家に言われて、無理だろと思いながら作ったら優勝したんです。そういう言葉を頂いて、人生が変わったことが自分の大きい分岐点でしたし、そういうことを思いながら丹波達夫というキャラクターをやらせてもらっています。