2023年に創立100周年を迎えるディズニーが、1991年に公開された名作アニメーション『リトル・マーメイド』を実写映画化。大ヒット公開中だ。本作のプレミアム吹替版で、エリック役の声優を務めた海宝直人に、吹き替え時の苦労や本作の魅力などを聞いた。
-劇団四季のミュージカル「美女と野獣」「ライオン・キング」をはじめ、数々のディズニー作品に出演してきた海宝さんですが、今回、実写映画の声優に決まったときはどんな気持ちでしたか。
ディズニー創立100周年という歴史的な年に公開される作品ですし、(本作の作曲担当の)アラン・メンケンさんの楽曲が大好きなので、出演が決まって本当にうれしかったです。(劇団四季のミュージカル)「美女と野獣」でデビューして、その後も「アラジン」や「ノートルダムの鐘」など、アラン・メンケンさんの作品に関わらせていただく機会が多かったので、僕にとっては神のような存在です。その彼がディズニーで初めて楽曲を作ったのがアニメーション版の『リトル・マーメイド』だったということもあり、この節目の年に参加させていただけるというのは、本当に光栄なことだと思いました。
-吹き替えで歌うときと舞台で歌うときの違いはありましたか。
吹き替えの場合、映像に合わせて歌うというのが大きな任務なので、片耳で原音を聞きながら音量調整をしながら歌いました。映像でダイナミックに動いているエリックに合わせて歌うので、いかにそのエネルギーを(自分は)動かずに出すのかが難しくもあり、面白い経験だったなと思います。
-楽曲シーンだけでなく、お芝居の場面でも同じような苦労と楽しさがありましたか。
そうですね。ディレクターの方が、どの程度の声で話すかという距離感を細やかに教えてくださったので、それはすごく助けになりました。マイクに向かって話していても、近くにいる人に話しているときと、船の上で甲板の向こう側にいる人に向かって叫んでいるときでは話し方も変わるので、その距離感をつかむというのが大事なんだろうなと思いました。
-海宝さんが演じたエリックは、どんな人物だと感じましたか。
アニメーションのときとは少し設定が変わっていると思いますが、養子で王家の出身ではないという背景を持っています。そんな中、自分の生きていきたい方向性と母から求められる王としての道の間で葛藤している姿は、現代人にも共感しやすいと思います。誰にでも、周りから求められることと自分自身がやりたいことのギャップというのは経験があると思うので。それから、すごくピュア。アリエルへの気持ちに気づくまでの行程を丁寧に描いているので、奥手でピュアなところがしっかりと描写されていて、すごく魅力的だなと感じました。
-“王子さま”ではありますが、すごく現代的なキャラクターですよね。海宝さんとの共通点はありましたか。
“歌にほれる”という感覚はすごく理解できるなと思いました。自分も、ラジオで流れている歌を聞いて、誰が歌っているのかを調べてその方の曲ばかり聞いていたという経験があります。
-では、本作の中で特に印象に残っている楽曲は?
(アリエルが歌う)「パート・オブ・ユア・ワールド」も素晴らしいし、アラン・メンケンさんとリン=マニュエル・ミランダさんが共作したエリックの新曲「まだ見ぬ世界へ」もパワフルなエネルギーにあふれる曲で印象深いですが、個人的には、「ヴァネッサズ・トリック」というヴァネッサの正体が明らかになるシーンが大好きです。アリエルの歌から始まって、最後にはアースラのせりふになっていくという、あのくだりのメロディーの使い方が抜群だなと。あのシーンを見るとゾワゾワします。
-アリエルを演じた豊原江理佳さんの印象は?
お会いしたのは製作発表とイベントだけなのですが、美しくて澄んだきれいな歌声でありながら、エネルギッシュでパワーもチャーミングさもあって、まさにアリエルだと思って拝見させていただきました。アリエルは外に向かうエネルギーやパワーにあふれたキャラクターですが、豊原さんの声もまさにパワーあるアリエルを表現していると思います。