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「いろんな仕掛けを考えながら演じていました」上野樹里、「今の時代にぴったりな映画だなと思いました」林遣都『隣人X -疑惑の彼女-』【インタビュー】

-今回は、メタファーというか、SFの形を借りていろいろな問題を提示するというタイプの映画だったと思いますが、こういう映画についてどう思いましたか。

上野 やりがいを感じられるところはありますね。やっぱり「今の世の中ってどうなんだろう」ということを、こういう映画の世界を通して、いったん社会からちょっと離れた世界の中に突入して、映画館を出た時に、自分というフィルターをかけて、「もしかしたらいろんなことを考え過ぎていたのかな」「あのことはどうだろう」「自分が今思っていることはどうだったんだろう」というふうに、自分と向き合うきっかけにしていただければと思いますし、ラブストーリーやミステリーとしてはもちろん、実は社会派的なところも、ご覧になった方が、何かしらの今の世の中をどう生きるのか、自分なりの意味を見いだしてもらえたらと思います。

林 見ていただいた方にはそれぞれに感じるポイントがあると思いますが、SF的な要素を用いることで、作り手の強い主張がなくなるところがいいですね。固定観念を押し付けるのではなく、見た人が自由に解釈して、何かと置き換えて考えてみるとか。見る人に委ねる部分を感じます。

-良子の「心で見ることが大切なんだと思うんだ」というせりふがあって、それが『星の王子様』の朗読とも重なってきます。あの言葉がこの映画のテーマの一つかなと思ったのですが…。

上野 そうですね、最初はちょっと違う文章を朗読する予定だったんですけど、現場で、スタンバイ中にその本を読んでいて、とても大切なメッセージになる一文を見つけまして。監督にすぐ伝えて撮影に取り組みました。普段生きていて当たり前にそばにあるもの、失って気付くかけがえのないもの、大体目には見えない感覚的な物事だったりしますよね。大好きな居場所とか、居心地とか、安心感とか温かさとか。大変な目にあって初めて自分の気持ちに気付けたりする。良子は口数が多い方ではありません。でも、大好きな本を読んでいる、何げないシーンから、人として失ってはいけない、良子からの大切なメッセージを感じとっていただけたらと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 (C)パリュスあや子/講談社