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「この映画のスケールの大きさを劇場で見てほしい」 高良健吾『罪と悪』【インタビュー】

-春のゆがみという点では、彼にはいろいろな点で二面性がありますが、演じる上で、何か気を付けたところはありますか。

 春の二面性というよりも、あれが普通というか、春のようなグレーな人たちって、常にオラついているわけではないし、常に怖いわけでもなくて、家庭ではすごく柔らかかったり、子どもには絶対にそういうところは見せなかったりします。ただ、ここだけはという時に出すんですね。僕はそれがしたかったので、常にピリピリしている春ではありたくないと思いました。事務所に刑事になった晃が来て、尋問のようなことをされたところと、暴力団の清水(村上淳さん)たちが来るところだけは出していいのかなと思っていました。違う出し方としては、仲間に闇の仕事をさせている時に、春はお店で笑いながらレジを打っているところ。逆にそっちの方が怖いし、広がると思いました。

-この映画は、監督との縁もあったと思いますが、高良さん自身にとっては、どういう位置付けのものになりますか。

 まず、助監督の時代から知っている方が、こうして映画を撮れたということが奇跡だと思います。齊藤さんの頭の中にあったアイデアが脚本になり、映画になり、ここまでたどり着いたということに本当に感動します。そして、10代の頃から一緒にオーディションを受けていた大東くんと石田くんと一緒にやれたことも併せて、僕にとってこの映画は奇跡だらけの作品です。僕自身も、久しぶりにとんがった、ソリッドなものを、今の自分でやれたという意味ですごく重要な作品です。僕が好きな映画の条件は、スケールがでかいことが重要なのです。この映画はスケールの大きなものになるという予感がしたので、完成して感動しています。それは、「あのシーンをそう描くのか」というスケールの大きさだったり、セオリー通りではないことであったり、齊藤さんからしか生まれないものだったり、そういうものが積み重なったものが、この映画のスケールの大きさだと思います。

-最後に、これから映画を見る観客に向けて、アピールも含めて一言お願いします。

 この映画のスケールの大きさを劇場でご覧いただきたいです。「罪と悪」というタイトルだからこそ、何が罪で何が悪なのかを考えて見ていただけるとありがたいです。僕は悪人というのはいないと思っていますが、この映画に出てくる人たちは罪人だらけです。それぞれの立場で犯した罪が、悪に近いものになっていると思います。この映画の大人たちは、あったことをなかったことにする人たちばかりですが、なかったことにされた人たちや出来事が、時間をかけてどう変化していくのか。そのさまを、このスケールの大きな映画でぜひご覧ください。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2023「罪と悪」製作委員会