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「生への回帰というのがこの映画の目指したところです」荒木伸二監督、若葉竜也『ペナルティループ』【インタビュー】

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-監督、この映画はストーリーや説明を極力省略し、せりふも少ないです。そうする意図はどこにあったのでしょうか。

 最初は、せりふはもっと少なくて、せりふなしでできないものかと思いました。でも、やっぱりループやSFを扱うと、少しはせりふが欲しくなるんです。それでも、今映画館やテレビでかかっているものを10としたら、0.2ぐらいだと思います。せりふを削れるだけ削ってみようという話を若葉さんにしたら、手足をもがれたみたいで超うれしいみたいなことを言ったので、これはいいぞと。せりふをどれだけ削れるかと無理ゲーに若葉さんは乗るのかと知ってから、ちょっと前に進みやすくなりました。

-上映時間も非常にコンパクトになっていますね。

 目標は90分だったんですけど、やっぱり撮っていると愛情が生まれてしまい、99分になってしまいましたが、何とか2桁で収めました。2桁で収めると、乗り物みたいな感じがして、びゅんと乗れるなというのがあって、気に入っています。

-監督がこの作品に込めた意図や思いはどこにあるのでしょうか。

 意図ということでいうと、生への回帰、です。実は。何だか窮屈な時代だと思います。社会なのか時代なのか精神的になのか分かりませんが、とにかくとても窮屈で、スマホの中やネットの海に、吸い込まれてつぶされてしまいそうです。薄っぺらくて、うそくさくいなあ、何だかと、日々思います。そんな今、外に出て風を浴びてみるのはどうかと。生きていることを実感しませんかと。転んだらけがをするし、血を流すし、痛いけど、そういう全て、生きていることに戻りませんか、というのが意図です。言ってしまえば。

-若葉さんは「この映画をカルト映画と認定する」と言っていますね。

 まあ、あえてカテゴライズするならですよ。「何を見たんだ、何を見せられたんだ」みたいな読後感が、例えば『鉄男』(89)とか『ピンク・フラミンゴ』(72)を見た後の気持ちと同じになったということで、「俺がカルト映画を見た時と同じだな」と思ったので。

-最後に映画の見どころも含めて、観客に向けて一言お願いします。

若葉 この映画は嫌いな人は大嫌いだと思います(笑)。僕は今までの日本映画が大好きな人たちには受け入れられないだろうなと思っています。ただ、それに対するアンチテーゼでもあったので、すごく興味があるのが、飽和状態の日本映画界にこういうものが投下された時に、群衆の中でどれぐらいの反応があるのかというのはすごく興味があるので、その声を早く聞きたいです。

荒木 99分の新しい乗り物を作りました。客席のアームレストにしっかりつかまって、お気を確かに、振り落とされないようにご覧ください。気に入ったら、何度も見てください。繰り返し、見れば見るほど楽しめる作品にできたと思っています。

(取材・文・写真/田中雄二)

 

『ペナルティループ』