
-堺と小河がファミレスで会話するシーンでは、染谷さんがほかのシーンとは別人のように生き生きとしていたのも驚きでした。
染谷さんのお芝居は、楽しそうなときも、わかりやすく楽しそうにするのではなく、せりふの間のちょっとした息遣いや一瞬のほほ笑みから「楽しい」という雰囲気が伝わってきていました。しかも、それを見ている私まで楽しくなってきて。そういう染谷さんのお芝居が、私のお芝居に対する考え方を広げてくださって、すごく勉強になりました。
-ホラーである本作以外にも、唐田さんは近年、幅広い作品や役に挑戦されていますが、何かきっかけがあったのでしょうか。
以前は、「おとなしい」、「おしとやか」という印象を持たれることが多かったのですが、実際の私の性格は真逆なんです。その印象が変わるきっかけになったのが、「極悪女王」です。あの作品で演じた(実在の女子プロレスラーをモデルにした)長与千種という役が、自分に近いキャラクターだったおかげで、自分自身を素直に表現できるようになりました。しかもありがたいことにそれ以後、挑戦的な役をいただく機会も増え、自分の色々な面を出せるようになってきました。
-それによって、お芝居に向き合う気持ちも変わってきたのでしょうか。
最近は、お芝居を大事にする気持ちが以前よりも高まり、そのために自分の時間を充実させることを心掛けています。自分自身に魅力がないと役も魅力的にならないので、自分が人生を楽しむことで、それが役に生きればいいなと思っています。具体的には、色々な人に会ったり、映画を見たりして、インプットする機会を増やすようにしています。おかげで、お芝居を通じて自分の中の新しい感情を発見する機会も増え、人生が豊かになった気がします。
-唐田さんは韓国でも芸能活動をしていますが、それもその一環でしょうか。
音楽や映画、テレビドラマなど、韓国のエンターテインメントは子どもの頃から大好きだったので、最初にお話をいただいたときは、単純にうれしかっただけでした。でも、韓国で活動するうち、徐々に「もっと学べることがあるはず」と考えるようになって。自分の成長にもつながるので、挑戦する気持ちは常に忘れずにいたいと思っています。
-さらに、本作は今年開催された第76回ベルリン国際映画祭で国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞を受賞したほか、「極悪女王」もNetflixで世界配信されています。唐田さんは海外との距離感をどのように捉えていますか。
ありがたいことに、初めてヒロインとして出演した『寝ても覚めても』で、二十歳のときカンヌ国際映画祭に参加できたことが、自分にとって大きな経験になっています。当時は、その重大さをわかっていませんでしたが、あとで振り返ってみると、すごい経験をさせていただいたなと。おかげで、映画が世界共通の芸術であることを早い時期から意識するようになりました。決して、カンヌに行きたいから作品を作っているわけではありませんが、参加する以上はカンヌに届くような作品になれば…という気持ちは常に持っています。その上で、結果的に参加できたら、苦労が報われるご褒美のような時間になるのかなと思っています。
-今回、ホラーに挑戦して、ご自身のお芝居について新たな発見はありましたか。
染谷さんのお芝居が本当にすてきで、学ぶことが多かったです。私はお芝居するとき、思わずギアが入りすぎたり、逆に緊張したりして苦労することがあるのですが、染谷さんはそういうことが一切なく、常に肩の力を抜き、せりふを自分のものにし自然体で発していました。それが衝撃的で。自分もそんなふうになりたいと、改めて思いました。毎回、現場で学ぶことはたくさんありますが、今回も染谷さんから学んだものを、いかに自分のものにして次の作品に生かせるか、考えているところです。
(取材・文・写真/井上健一)








