地球環境問題の解決に貢献する優れた科学技術業績をたたえる地球環境国際賞「ブループラネット賞」(旭硝子財団主催)の2024年(第33回)受賞者が10月22日、東京都内で記者会見し、持続可能なより良い地球環境を構築するためには、これからの地球環境や社会の在り方に関する「前向きな将来ビジョン」を人類が共有する必要がある、と強調した。
受賞者のロバート・コスタンザ教授(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、グローバル・プロスペリティ研究所)と、受賞団体「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES、イプベス)」(ドイツ)のメンバーであるアン・ラリゴーデリー事務局長、ルサンド・ディジバ博士の計3人が記者会見して、評価された研究内容や今後の抱負などを述べた。
新学問分野「生態経済学」の共同提唱者であるコスタンザ教授は、自然環境が人間にもたらす恩恵(水や太陽エネルギー、景観など)の経済的価値(生態系サービス)は世のGDP(国内総生産)総額を上回ることを実証した成果が評価された。教授は「持続可能でより良い地球環境、社会を実現するためには、これからの個人の生活や社会の在り方をどのようにしたらよいか、『将来ビジョン』をみんなが語ることが重要だ。より良い将来像を人類が共有し、GDPに代わる新たな幸福の評価指標を打ち立てていかなければならない」と話した。
生物多様性や生態系サービスなどに関する世界中の学者の科学的知見を報告書にまとめて各国政府に政策提言しているイプベスのアン・ラリゴーデリー事務局長は「若い人には地球環境の将来に悲観しないで明るい前向きな気持ちをぜひ持ってほしい。生物多様性や環境問題に関する情報へのアンテナを高くして質の高い情報をつかみ、若い人同士のつながりもつくってほしい。情報を得てつながりをつくり、そのつながった力を持続可能な地球環境をつくるための行動に向けてほしい」と訴えた。
イプベスのルサンド・ディジバ博士は「旭硝子財団など関係者にイプベスの取り組みを認めていただき、とてもありがたい。イプベスの提言が、将来の人類や持続可能な地球環境の構築に役立つ地球規模の動きを促進していければ」と語った。
ロバート・コスタンザ教授とイプベスにはそれぞれ、賞状のほか賞金50万ドル(日本円で約7500万円)が贈られる。表彰式は10月23日、東京都千代田区の東京會舘で開催。
ロバート・コスタンザ教授ら受賞者が研究内容を説明する「記念講演会」も、東京大・伊藤国際学術研究センター地下2階伊藤謝恩ホール(東京都文京区)で10月24日午後4時から、京都大国際科学イノベーション棟シンポジウムホール(京都市)で10月26日午後1時20分から開かれる。