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日本代表にくら寿司の田中社長 世界一の起業家選ぶ世界大会へ

日本代表に選ばれた、くら寿司の田中邦彦社長(左)
日本代表に選ばれた、くら寿司の田中邦彦社長(左)

 世界一のアントレプレナー(起業家)を決める年1回の国際大会「EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」(EY主催)に出場する日本代表に12月9日、くら寿司(大阪府堺市)の田中邦彦社長が選ばれた。約80カ国・地域の代表が2026年6月にモナコで開かれる同大会に臨み、事業の革新性や社会への影響力、会社の存在意義などをアピールして“世界一”を目指す。

 この日、東京都内で開かれた表彰式「EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン」(EOY Japan、EYジャパン主催)で日本代表に選出された田中社長は「企業は銭もうけするだけでいいのか、そうではありません。日本には“恥の文化”があり、恥ずかしいことをしたら、外を歩けない、御天道様(おてんとうさま)に恥ずかしいという思いが庶民の中にあります。見えない部分も大切にして、良心に恥じない仕事をする、これこそ大事なことではないでしょうか。この日本の文化を世界に発信したい」と述べ、世界の優れた企業家が集うひのき舞台に臨む意気込みを示した。

 また日本代表候補12人に選ばれた際のあいさつでは「われわれ飲食業分野には、ノーベル賞やスポーツの大谷翔平選手に与えられるような世界的な権威ある賞はない。今回私が世界的企業EYから賞(EOY Japan賞)を受けたことは、多くの飲食業者に大きな希望と光を与えるはずだ」と述べ、今後飲食業界全体の評価が高まることへの期待を語った。

花束やトロフィーを贈られたくら寿司の田中邦彦社長=東京都港区のザ・リッツ・カールトン東京、2025年12月9日

 世界一の起業家を決める国際大会「EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」は1986年に米ウィスコンシン州ミルウォーキーで始まり、現在約80カ国・地域の代表が参加する国際大会に成長。日本では、EY新日本有限責任監査法人(東京都千代田区)らで構成するEYジャパンが2001年から日本代表を選ぶ国内大会「EOY Japan」を毎年開き、今回25回目を迎えた。前回までにタイミー代表取締役の小川嶺氏ら24人が日本代表に選ばれたが、世界一の栄冠を手にしたことはない。

 日本代表を決める選考委員長を務めたCVCキャピタルパートナーズ日本法人最高顧問の藤森義明氏は「これまでの25年間、素晴らしいアントレプレナーを日本代表に選出してきたが、残念ながら世界一になっていない。今回こそは絶対に世界一を勝ち取ってほしい」と田中社長の世界への挑戦に期待した。 

 田中社長と共に「日本代表候補」の12人に選ばれた起業家は、石坂典子・石坂産業代表取締役▽上野山勝也・PKSHA Technology代表取締役▽垣内俊哉・ミライロ社長▽片石貴展・yutori社長▽芦田信・JCRファーマ会長兼社長▽今村健二・オーレックホールディングス社長▽桐田直哉・カワトT.P.C.社長▽古野重幸・フルテック代表取締役会長CEO▽矢内賢征・豊国酒造合資会社代表社員▽山上浩明・山翠舎代表取締役▽山下和洋・ヤマシタ社長。

日本代表候補に選ばれた12人の起業家

 この12人のうち、田中社長とPKSHA Technologyの上野山代表取締役、オーレックホールディングスの今村社長の計3人は「部門別大賞」に選ばれ、モナコ~日本間の航空券やモナコでの宿泊費などが副賞として贈られた。宿泊費は2015年日本代表の筒井宣政・東海メディカルプロダクツ会長がEOY Japan開催25周年を記念して金銭的支援を申し出た。出場資格はないものの上野山氏と今村氏にも、モナコの世界大会を“体感”してほしいという気持ちからという。

 筒井会長は「モナコの世界大会の経験者として後に続く若い人を応援したかった。世界大会はかなり刺激的です。今後の会社経営にとって必ず良い経験をもたらすと思いますので、ぜひ“世界”を見てきてください」と話した。

 この日は同じ東京都内でEYジャパン主催の「EY Winning Women 2025」の表彰式も開かれ、革新的な先進事業を展開する女性起業家6人の取り組みをたたえた。同表彰制度の責任者を務めるEY新日本有限責任監査法人パートナーの関口依里さんは「国内スタートアップ企業に占める女性起業家の割合はまだ約1割にすぎない。われわれは女性起業家に伴走し、共に成長する存在でありたい」と述べ、EYの国際ネットワークを生かした資金調達や販路拡大などの事業支援に引き続き取り組む考えを示した。

事業内容を説明する生方祥子・elleThermo代表取締役

 受賞した6人は、秋枝静香・サイフューズ代表取締役▽生方祥子・elleThermo代表取締役▽荻野みどり・ブラウンシュガー1ST代表取締役▽川又尋美・Mecara代表取締役CEO▽山口葉子・ナノエッグ代表取締役▽吉井幸恵・リンクメッド社長。

 6人はそれぞれの事業内容を説明し、これからの事業展望や資金調達戦略、事業の社会的意義などを力強く語った。

 2011年3月の東日本大震災時に電⼒の重要性を再確認して熱エネルギー変換技術(熱利用発電)の開発に取り組んでいるelleThermoの生方代表取締役は「安全・安心な理想の熱利用発電を実用化して、世界のエネルギー問題を解決したい」と話した。

 「EY Winning Women」は2013年に始まり、今回で12回目。これまでに65人が受賞している。