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企業の9割が幼稚園費用支給 海外赴任者支援の実態調査

海外赴任者の子どもの幼稚園費用支給に関する調査のグラフ=EY税理士法人ホームページ

 EY税理士法人(東京都千代田区)がこのほど発表した日本企業海外赴任者の帯同家族に関する企業のサポート実態調査(2025年8月8日~9月19日実施、有効回答227社)によると、企業の9割が、海外赴任者の子どもの幼稚園(保育園)費用を何らかの形で支給していることが分かった。家族形態の多様化や昨今の円安・海外物価高などの影響で家族を帯同する海外赴任者の処遇や制度を見直す企業が増えているという。

 回答のあった227社のうち海外赴任者が帯同する子どもの幼稚園費用を「支給していない」企業は21社で全体の1割に満たず、全体の89%を占める201社が「全額・一部含めて何らかの形で支給している」と回答した。

 現地の幼稚園の年間費用(授業料)が200万円相当の場合の会社の支給額は、日本語授業の幼稚園では平均177万4045円(128社回答、中央値は200万円)、日本語以外の授業の幼稚園では平均164万6698円(87社回答、中央値は200万円)だった。

 帯同する子どもが、日本人学校以外の小中学校に通学する場合に、小中学校費用を「全額・一部含めて何らかの形で支給している」企業は81%(183社)を占めた。さらに帯同する子どもが現地の高校に通学する場合の高校費用を「全額・一部含めて何らかの形で支給している」企業も81%(184社)に上った。

 また帯同家族の現地就労に関しては「(就労ビザの取得や就労先の紹介などをして)積極的に認めている」企業は2%(5社)にとどまり、半数を超える61%(138社)は「消極的に認めている(希望があれば認めるがサポートはしていない)」と回答した。「就労を認めていない」企業も21%(47社)あった。

「帯同配偶者はフルタイムの仕事をしている、男性だけでなく女性も赴任するという前提で海外赴任者関連制度を根底から見直すことも一案」と指摘するEY税理士法人パートナーの藤井恵さん=写真はEY税理士法人ホームページ

 調査を担当したEY税理士法人パートナーの藤井恵さんは「円安や海外物価の上昇で海外赴任時の金銭的メリットは大きく減少している。さらに共働きが一般化する現在、配偶者が海外赴任に帯同することで離職・休職を余儀なくされるケースは世帯年収の大幅な減少につながり、将来的なライフプランにも重大な影響を及ぼす」と指摘。

 その上で「帯同者側にとっては、海外でのリモートワークや現地就労が依然として困難であり、キャリアの中断を受け入れざるを得ないという課題が残る。このように働き方やキャリア観が大きく変化する中で、海外赴任者関連制度も抜本的な再設計が求められている」とコメントしている。

 調査の詳細はEY税理士法人のホームページに掲載している