ビジネス

見守り網を街の基盤に――岐阜市×otta チェンジHDと連携 太陽生命も見守りへ

 岐阜市は、IoTを活用した見守りサービスを手がける株式会社otta(福岡市)と連携し、住民をつなぐ見守り網を広げている。地方創生事業を展開するチェンジホールディングス(東京都港区)も加わり、2026年4月から市立47校の希望する全児童に小型の見守り端末を無償配布。市内約900カ所に固定型見守りスポットの設置を進めている。
 さらに9月には、太陽生命保険(東京都中央区)が全国1万人規模の営業職員たちが持つ社用スマートフォンを活用した見守り活動をottaと連携して始めると発表。日常の営業活動を地域の安全確保に生かす、新たな見守りの形が動き出している。

▽ボランティア頼みから全児童対象へ

 岐阜市では、不審者の出没や子どもへの声かけ事案が発生し、登下校時の「子どもの安全」と「保護者の安心」の確保が大きな課題となっていた。市はこれまで、教育委員会や警察、交通安全協会、見守り隊、学校運営協議会などが連携し、地域住民のボランティアによる見守り活動を推進。2019年度からは、民間事業者のGPS位置情報サービスを利用する保護者への補助事業も導入してきた。
 しかし、従来の行政主導の取り組みや一部のボランティアの力だけでは、見守り網を持続的に維持するのは難しかった。保護者に金銭的負担をかけずに持続可能な見守り体制を構築するため研究を重ね、市は2025年10月、ottaおよびチェンジホールディングスと「見守りサービスの導入に関する協定」を締結した。

 2026年4月からは、市立の小学校45校、義務教育学校(前期課程)1校、特別支援学校(小学部)1校の全47校に通う児童のうち、希望者全員へ重さ約8グラムの専用見守り端末を無償で配布。地域全体で子どもたちを見守るセーフティーネットの運用を開始している。
 岐阜市は「本市は、子どもの安全と保護者の安心を確保するため、otta見守りサービスを導入いたしました。これまでの地域団体との連携や、GPS位置情報サービスを活用した補助事業に加え、BLE(Bluetooth)を使った新たな見守りサービスにより、地域全体で支え合う体制を構築し、面的な見守りを強化してまいります」としている。

▽民間2社が技術と運営力を分担

 今回の官民連携事業では、民間企業2社がそれぞれの専門性と知見を持ち込み、役割を分担して運営を支えている。
 スマート見守りプラットフォームを開発・提供するottaは、システムの構築・提供と運用全般を統括。小学校区ごとに通学路を中心とした約20カ所(市内全体で約900カ所)へ、固定型見守りスポットを設置する環境整備を担う。
 一方、チェンジホールディングスは、ottaと共同でサービスを運営。端末の配布実務や保護者向け事業説明会の開催などを担い、学校現場へのスムーズな導入を後押しする。
 児童が携行する端末は、省電力のBLE技術を活用する仕組みだ。街頭の固定スポットだけでなく、ottaと連携するタクシーや、専用アプリを入れた地域ボランティア「見守り人」とすれ違うことで、通過時間や位置情報がリアルタイムでシステムに記録される。
 ottaの山本悠人執行役員(タウンセキュリティ事業本部長)は、岐阜市、チェンジホールディングスとの連携によって「負担のない革新的な導入スキームを実現できました」と説明。今後は高齢者の見守りも含め、地域のセーフティーネットの底上げに貢献していく考えを示した。

▽鍵は「地域の目」拡大 高齢者にも

 官民連携で高度なデジタルシステムを導入しても、それを街全体で機能させるには「地域の目」をいかに増やすかが課題となる。見守り網の密度と精度を高めるには、固定スポットの設置に加え、移動する見守り拠点となる「見守り人」の存在が不可欠だからだ。
 岐阜市では、学校を通じた児童・保護者への周知を図るとともに、通学路や店舗、公民館など市内約900カ所への固定スポット設置を着実に進めている。併せて、一般市民に対して「見守り人アプリ」のダウンロードを広く呼びかけ、住民一人ひとりのスマートフォンを見守りセンサーとして活用する取り組みを展開中だ。
 このサービスは、万が一の緊急時に警察へ情報開示できる無料の基本プランと、日常的な移動履歴を保護者のスマートフォンで確認できる有料プランを組み合わせて提供されている。今後は事業への理解を深めながら、認知症高齢者の行方不明防止など対象を広げる計画で、地域社会全体の安心・安全を支える基盤として期待されている。

▽太陽生命1万人が動く見守りスポット

 見守り網をさらに広げる新たな取り組みとして、ottaは2026年9月、太陽生命との連携を発表した。太陽生命の営業職員や支社内務員が日常業務で携行する社用スマートフォンに「見守り人アプリ」を導入。全国1万人規模が見守り役を担う。端末を持った子どもや高齢者とすれ違うと、位置情報が自動的に記録される仕組みだ。
 固定スポットや住民ボランティアに加え、戸別訪問などで地域をきめ細かく移動する太陽生命の営業職員が「動く見守りスポット」になる。本業の営業活動の中で地域の見守りに加わる点が特徴だ。
 太陽生命は「各地の営業職員がご家庭を訪問する日々の活動を通じて、地域の安全に貢献し、お子様からシニアの方まで、誰もが安心して暮らせる温かい社会の実現を目指しています」と話している。
 ottaの見守りネットワークに、全国規模で展開する企業の日常業務が重なることで、見守り網の密度は高まる。ottaは今回の連携を、他の企業・団体との見守りネットワーク拡大のモデルにしたい考えだ。(株式会社共同通信社)