新型コロナウイルスの感染拡大によって国民全員に広まったマスクの着用。コロナ禍が落ち着いた後もマスクをしている人は多いが、このマスク着用はアレルギー様症状の改善に寄与しているのだろうか。サーモフィッシャーサイエンティフィック ジャパングループ(東京)が昨年8月に実施した「アレルギー様症状に関する全国実態調査」の結果を発表した。
調査対象は、直近1年間でアレルギー様症状を自覚していると回答した本人(中学生を除く15歳以上の男女、あるいは子どもに症状があると回答した保護者=20~59歳の女性)。ただし、新型コロナウイルス禍中の質問については、うち3年以上前から症状があると回答した人が対象。日本全国で5146人が回答した。
それによると、新型コロナウイルス禍前と新型コロナウイルス禍中(2020~22年)を比較した場合、新型コロナウイルス禍中は、アレルギー様症状の自覚がある人のうち、改善したと感じた人(「大幅に改善した」「改善した」と回答した人)の割合は約2割、改善したと感じなかった人(「変わらない」「ひどくなった」「とてもひどくなった」「その他/分からない」と回答した人)の割合は約8割となった。
新型コロナウイルス禍中において呼吸器症状が改善した理由として、「マスクをしたから」(56.5%)「手洗い・うがいなどウイルス感染予防がアレルギー症状悪化予防につながったから」(41.8%)「人との接触を控えたのでウイルス感染などによるアレルギー症状悪化が少なかったから」(36.6%)などが挙げられていた。
一方、呼吸器症状が改善しなかった理由としては、「わからない」(51.5%)を挙げる人が最も多く、「病院・診療所を受診しなかったから」(19.2%)「マスクではアレルゲンが防げなかったから」(16.7%)が続いた。
コロナ禍においては、マスクを常時着用することで、風邪をひかなくなったという声がよく聞かれた。だが、この調査では、マスクはアレルギー症状に効果をもたらしたと考える人がいる一方、マスクではアレルゲンの侵入を完全に防げないと感じる人もいることがわかる。
昭和大学病院 病院長の相良博典氏は、マスク着用の習慣化が花粉などのアレルゲンの影響を減らすことができたと考えられる一方、マスクの着脱時や非着用時などにはアレルゲンの侵入の可能性があることを示唆。また、コロナ禍中の医療機関への受診控えにも注目し、「医療機関で血液検査などのアレルギー検査を受けることは、早期にアレルギーの原因となるアレルゲンを特定し、結果として治療の選択肢を広げることにつながるため、とても重要。呼吸器症状の中でも特に喘息は、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬などの処方を受けるために、医療機関への受診が必要になる。アレルギー様症状の自覚がある方は、症状の悪化を防ぐためにも、ぜひ早期に医療機関にご相談を」とコメントしている。