産業技術総合研究所(東京本部・東京都千代田区、産総研)はこのほど、島津製作所(京都市)と共同して産総研バイオメディカル研究部門総括研究主幹の関口勇地氏らが、培養できない未培養微生物を含む多様な「原核微生物種」を迅速に同定する技術を開発したと発表した。
原核微生物種は細胞核を持たない微生物群。新しい同定技術は、20万件に及ぶ原核微生物のゲノム情報から推定した「大規模理論タンパク質量データベース」と、測定対象である物質(主にタンパク質)のイオン質量などを測定して物質の同定を行う「質量分析技術」を用いた。従来の「実測質量データベース」を用いた場合に比べ、同定可能な微生物種は10倍以上に増加。また、従来同定が不可能であった、培養できない未培養微生物の同定も可能になったという。
新しい同定技術の核となる「大規模理論タンパク質量データベース」は、公共の塩基配列データベースから入手した約20万件の原核微生物ゲノム情報を利用。これらゲノム情報からタンパク質量を予測する独自の情報解析を加えて、タンパク質の分子量を理論的に予測した、という。
産総研は「(今回の新たな同定技術は)ヒト・動物の感染症原因微生物の早期特定や食品分野の微生物検査、環境微生物分析の高度化・迅速化などに役立つ」としている。
開発した新技術の詳細は学術雑誌「Genome Biology」誌に掲載されている。