AEDが何のための機械なのか知ってるのは、日本人の何割?  実は同じくらい重要な心臓マッサージ

11086016282-1 「日本人の3割しか知らないこと」を探すテレビ番組が人気だが、もしかしたら日本人の3割も知らないのではと思うのが、AEDに関するさまざまな事実である。AEDとは正式名が“自動体外式除細動器”。病気やケガで倒れて意識を失った人の心臓に電気ショックを与えるあの装置である。あなたはこう思ってはいないだろうか。「AEDは止まった心臓を再び動かすための装置」だと。クイズならブー!不正解だ。正解は、「心室細動を停止させるための装置、それがAED」なのだ。 

 何のために心室細動を停止させるの? そもそも心室細動って何? さまざまな疑問が浮かんでくるが、答は次の通り。 

 心室細動とは、心室が不規則に痙攣(けいれん)することにより、全身に血液を送り出せなくなる状態のこと。人が倒れて意識を失っている場合、心室細動を起こしている可能性がある。血液を全身に送り出す心室が痙攣(けいれん)すると、重要な臓器に血液が行かなくなり、心臓が完全に停止してしまうのだ。それを防ぐため、心臓の不規則な動きをいったん電気ショックで止める装置、それがAEDである。一時的に停止させることで、再び正常な動きをする特徴があるので、AEDでショックを与え、いわばリセットさせているというわけだ(※1)。 

 ただ、そうは言っても心臓が痙攣(けいれん)を起こしている時間が長ければ長いほど、心臓を含めた全身に酸素が供給できない時間が増え、リセットをかけても再起動ならぬ再鼓動が難しくなってくる。完全に止まってしまった心臓に対しては、もはやAEDを使っても効果はないのだそうだ。 そこで、AEDの使用と同じくらい重要になってくるのがいわゆる心臓マッサージである。

 では、この心臓マッサージは何のために行うのかご存じだろうか。心臓を動かすためでしょ? そう答えた人は半分正解。実は同じくらい大切なのが脳に血液を送り込むことだ。人間の臓器の中で心臓と同じくらい重要なのが脳だということは誰もがご存じだと思う。だから応急処置として心臓マッサージを行い、いわば人力でポンプを動かしてでも脳への血流を確保する必要があるというわけ。 

 だが、この心臓マッサージ、やみくもに行ってもなかなかうまくいかない。日本蘇生協議会(JRC)が公表した救急蘇生のためのガイドライン(2015)をみると、いくつかの要求項目がある。例えば、圧迫位置は胸骨の下半分、圧迫深さは約5cm以上で6cmをこえない、リズムは毎分100~120回、圧迫比率は少なくとも60%以上・・・といった具合だ。横たわった人の胸に両手を当てて強く押しているシーンを、テレビなどでよく見かけるが、効果的な心臓マッサージを行うためには正しい動作が要求され、そのためにはある程度の知識と訓練が必要なのだ。消防庁や日本赤十字などでは救命講習を随時、開催しているが、あなたはその講習を受けたことがあるだろうか? そして、その訓練を効果的に行うためのシステムがあるのをご存じだろうか?  

 心臓マッサージが正しく行われているかどうかを確認できるそのシステムとは、住友理工株式会社が開発した「しんのすけくん」だ。別名“胸骨圧迫 訓練評価システム”といい、訓練用人形の胸部にセットするセンサーシートと、コントローラー、パソコン用ソフトウェアの3点で構成されている。「しんのすけくん」は、胸骨を正しい位置、正しい深さ、正しいリズムで押せているかをパソコンの画面で、リアルタイムで確認できる。カラーマッピングで圧迫位置と深さを「見える化」し、音声ガイダンスも備えているので、これまで勘と経験に頼っていた心臓マッサージを即時に判定し、是正することが容易になっている。また、訓練を項目ごとに数値で表示し、レーダーチャートや総合得点を算出するので、訓練の習熟度も一目でわかるのだ。  

 突然訪れるさまざまな災害や急病人に備え、会社や学校、さまざまな団体でもぜひ「しんのすけくん」を一台保有し、命を救う技術を習得しておきたいもの。実際にどんなものか見てみたい人は、10月12日~14日まで東京ビッグサイトで行われる「国際福祉機器展」に行ってみよう。住友理工のブース(東3-17-16)で「しんのすけくん」のすごさを体験できる。もし、心臓マッサージが「日本人の7割ができること」になれば、もっと多くの命が救えるに違いない。 

 

※1 日本救命医学会のホームページより