最近、週末に没頭していることがある。生成AIを使ったプロダクト作りだ。
米アンソロピックのAIモデル「Claude(クロード)」で、パソコンやスマートフォンのブラウザーで遊べる教育ゲームを作ってみた。他にも、AIやメディアに関する情報を自動で収集し、ニュースレターを作成する仕組みも実験的に構築した。
AIと対話しながら進めることで、簡単なプロダクトなら専門家でなくても作れるようになったことを実感する。リビングのソファに座ってMacBookでプログラミングをしていると、シリコンバレーのIT企業で見たエンジニアのような気分にも浸れる。
先日、あるスタートアップ企業を訪問した。FDEと呼ばれるエンジニアがいるという。Forward Deployed Engineerの略で、顧客企業に入り込み、課題を聞き、最適化されたAIツールを開発、実装する。コンサルタントとエンジニアを掛け合わせたような職種と言えば分かりやすいかもしれない。
生成AIの活用が広がる中で、脚光を浴びている。開発にAIを全面的に活用することで、コストを大幅に下げられるといい、これまで数千万円はかかっていたとみられる案件を、1桁低い金額で手がけることもあるという。
今後、企業の新規事業や起業のスピードは大幅に上がり、ハードルは下がるのではないか。アイデアがあれば、まず作ってみる。使ってもらい、フィードバックを受け、磨くのか、方向転換するのかを判断する。このサイクルを高速で回す力が、これまで以上に重要になる。
失敗のコストは下がるとみられる。以前なら、試作品を作るだけでも予算や外注先の調整が大変だった。失敗の烙印を押されるのを避けるために、新しいことに挑みにくい傾向もあった。しかし、AIを使って内製化すれば、小さく作り、反応が悪ければすぐ直せる。撤退もしやすい。挑戦の回数を増やせること自体が競争力になる。
逆に、企画書を何度も作り直し、会議を重ね、判断に時間をかける硬直的な組織は、変化についていくのが難しくなるかもしれない。生存競争の厳しいビジネスの世界では、まず作ってみる力を持つ企業とそうではない企業の差は、弓矢と鉄砲ほどになるのではないか。
もちろん、AIで作れるからといって、すぐに業務システムとして使えるわけではない。安全性や個人情報、知的財産権、保守運用の体制は確認しなければならない。しかし、試作品を作るハードルが格段に下がった意味は大きい。頭の中のアイデアを実際に動くものとして見せられるようになったからだ。
私のゲームも、家族や知り合いに試してもらった。高校生の娘からは「難しすぎる」との反応だった。作ることが簡単になっても、使ってもらえるものに磨き込むのは簡単ではない。結局、必要なのは、まず作ってみる軽さと、顧客に寄り添い、改善を続ける粘り強さなのだと思う。
(共同通信デジタル事業部 吉無田修)
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.27からの転載】







