AI(人工知能)が人間の仕事を奪うのではないかという懸念が広がっている。人間はテクノロジーに取って代わられる運命なのか? ――しかし、労働者がそのようにばかり捉えず、むしろ成長のために活用していきたいと考えている人も少なくないという調査結果が出ている。
総合人材サービスのランスタッド株式会社(東京) は、AI導入による仕事への影響についての調査レポートを、日英両語で公開した。
ランスタッド株式会社は、オランダに本社を持つ人材サービス会社「ランスタッド」の、日本における持株会社「ランスタッドグループジャパン」の子会社。今回、ランスタッド株式会社が公表したレポートは、ランスタッドが毎年実施し、今年も世界34の国と地域で実施した労働者意識に関するグローバル調査「ランスタッド・ワークモニター2023」の派生レポート。5カ国(アメリカ・イギリス・オーストラリア・インド・ドイツ)の労働者7100人を対象に調査し、AIが仕事に与える影響の有無・AI研修の需給ギャップ・職場におけるAIの活用方法への期待値と脅威などについて、労働者の意識や雇用主に求められる対応について解説している。
それによると、「AIの急速な発展に伴い人間はテクノロジーに取って代わられる運命なのか」という疑問については、52%の労働者が「AIは雇用を脅かす存在ではなく自身のキャリアアップや昇進につながるものだ」と考えており、53%が「より多くのAI研修を受けて将来のキャリアや収入増につなげたい」と答えた。さらに、半数近く(47%)が職場でのAI活用に期待を寄せており、仕事への影響を懸念しているという全体の約4割(39%)を上回った。職場におけるAI活用に最も期待している世代は「ミレニアル世代(1981~96生まれ)」で53%、次いでZ世代(97~2012)が50%、X世代(1965~80)が42%、団塊世代(1946~64)が35%だった。
2023年春以降、AIスキルに言及した求人情報は20倍に増加している。そのような中、求める研修スキルとして50%の労働者が「AI」を挙げており、「マネジメント・リーダーシップ」「ウェルビーイング・マインドフルネス」に続き3番目に需要が高かった。一方で、過去1年間にAI研修を受けた人の割合は13%にとどまった。
特にZ世代は、仕事の柔軟性よりも研修育成を重視しており、会社が学習と能力開発を提供してくれない場合、47%が会社を辞めると回答しており、適切な能力開発機会を提供するための努力をしなければ、能力と意欲のある若い世代を確保することは難しいといえそうだ。
多くの企業がAI導入を急速に進める中で、労働者の多くもまた、テクノロジーに対して恐怖心よりも期待を抱いていることが見えた今回の調査結果。ランスタッドは、「転換期において働き手が変化に適応できるよう、影響を受けると見込まれる人々が異なる業種に対応できるよう訓練機会を提供したり、キャリア転換支援を行ったりすることが必要だ」と指摘。「企業は労働者の意見を収集しながら、AIの利点と必要性を徹底して説明して変革推進し、研修育成を十分に提供することでより価値の高い仕事に集中してもらえるようにするべきだ」と解説している。