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三井寺の円珍関連文書「ユネスコ・世界の記憶」登録 大津市で特別展、9世紀の日中交流の歴史物語る

三井寺の円珍関連文書「ユネスコ・世界の記憶」登録 大津市で特別展、9世紀の日中交流の歴史物語る 画像1
「越州都督府過所」

 

 滋賀県大津市の天台寺門宗総本山・三井寺(園城寺)が所有する国宝「智証大師関係文書典籍」「五部心観」2件が2023年5月25日、「ユネスコ・世界の記憶」への登録が決定した。それに伴い大津市で特別展などのイベントが開催される。

 今回登録されるのは9世紀の日本と中国の文化交流を記す史料群で、2件は「智証大師円珍関係文書典籍-日本と中国の文化交流の歴史」の一部として登録される。資料群を構成するのはこのほか、いずれも東京国立博物館所有の国宝「円珍関係文書」と「円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書」。

 これらの史料には当時の大帝国・唐の制度を示す文書の原本が完全な状態で含まれており、特に、園城寺が所有する唐の役所が発給した通行許可書「過所(かしょ)」は、唐代の書式例を完全な形で伝える世界で唯一現存する一次史料。過所には「円珍は、越州の開元寺を出発し、洛陽・長安・五台山を巡礼し、再び開元寺に帰還する予定である。その往還の州県にある関津などで、官司にとがめられないよう、交付申請を行う」という趣旨が書かれているという。これらは円珍(814~891年、追号は智証大師)が日本に持ち帰り、1100 年以上にわたり保管されてきた。

 円珍は、853 年から858 年まで遣唐使として唐に留学。日本の仏教普及に重要な働きをした日本天台宗の高僧で、第5 代天台座主として園城寺を再興、天台寺門宗の宗祖と仰がれている。円珍にまつわる膨大な文書典籍がまとまって伝来したことは、日本の宗教史上においても希少とされる。

 今回の登録について地元滋賀県の三日月大造知事は「円珍上人が中国への命がけの旅をへて日本に持ち帰った大切な古文書や典籍類が、度重なる戦乱や災害をくぐり抜けて守り継がれてきた結果、世界に唯一現存する貴重な記録として認められたものであり、滋賀県民にとっても大きな喜び」とコメントした。

 2件の特別展示は滋賀県大津市の園城寺文化財収蔵庫で7月2日まで、大津市歴史博物館で7月4日から30日まで行われる。7月27日には「智証大師円珍の足跡と『世界の記憶』」(仮題)と題した福家俊彦氏(園城寺長吏)の講演会が、午後2時から大津市の「コラボしが21」で開かれる。