少子化の時代、先祖代々の墓も維持する人が減り、いわゆる“墓じまい”を検討する人が増えている。改装ではなく、維持の負担がかからず自然に返すことができる散骨という選択肢は魅力的だ。故人が好きだった場所などがあればなおさら。もちろんどこでも好きな場所に散骨できるわけではなく、エリアは制限されているが、近年散骨を希望する人が徐々に増えていることを受け、出航できる場所が増加。海洋散骨「ブルーオーシャンセレモニー」を実施しているハウスボートクラブ(東京)では、チャーター散骨の出航拠点が全国81カ所に拡大している。海に面している全ての都道府県から海洋散骨クルーズの出航ができるということだ。
同社での海洋散骨実施件数は2022年には年間809件、2023年は862件と年々増加。問い合わせや要望も増えているといい、自分や故人が生まれ育った土地から出航して散骨したい、家族の思い出の土地から故人を送りたいなど、出航エリアに関する要望などが月に300件を超えることもあるという。
出航には、各地の観光船や遊漁船などを運航している船舶事業者との協業が必要不可欠。仏事や散骨にネガティブな意見も多く、出航を断られるケースもあったが、縁のある場所で散骨を希望する人がいることや、厚労省の定めるガイドラインを遵守して散骨していることなどを伝え、「人のためになるなら」と快諾してくれる事業者も増えて、出航エリアの拡大につながった。目下、国内に加えハワイからも出航できる。