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「乗務員が減っても乗客の“会話”は減らさない」 自動運転バスにAI車掌

AI車掌「萩音士清平」のタブレット画面

 過疎地を走る路線バスの運転手さんから降車の際、お国言葉で旅の安全を願う温かい声を思わずかけられると、旅情が増し、ちょっと得した気分になる。運転手や車掌のいない無人の自動運転バスではけして経験できないぜいたくだろう。

 面積は東京23区を上回るが人口わずか約5000人の北海道上士幌町(かみしほろちょう)を走る自動運転バスに、対話型の人工知能(AI)車掌と会話できるタブレット端末がこのほど設置された。自動運転バスで会話できない味気なさを少しでも回避しようとする工夫の一つだ。

 自動運転バスを運行する上士幌町が「運転手などの乗務員が減っても、乗客の会話は減らさない」を願い、AI車掌を導入した。

 AI車掌は「萩音士清平(しゅうおんじ・きよひら)」と命名。タブレットの画面には萩音士車掌の上半身のアニメーションが表示され、乗客が話しかけると、対話型AIが音声を拾い、萩音士車掌のアニメの口や手が動き、受け答えの音声を流す。バス停留所到着の音声案内や付近の施設情報などを音声で告知する。会話の音声やアニメの動きは人間に近い口ぶり、手ぶりを目指したという。

 バスの主な利用者に想定している高齢者に親しみを持ってもらえるよう、アニメが笑顔で会話するよう工夫もしている。

 自動運転バスの定員は11人。運行速度は20キロ未満。上士幌町は少子高齢化に対応し北海道初となる自動運転バスの公道走行実証を2017年に着手。24年度中に完全自動運転に近いレベルの運行を一部区間で目指している。

 AIの音声対話システムはIT企業アドバンスト・メディア(東京都豊島区)が提供。萩音士車掌のアニメ部分は広告企業のスパイスボックス(東京都港区)監修の下、グラフィックデザイン企業のトリバルコン(東京都渋谷区)が担った。