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中小企業の4割は「新規顧客・販路の開拓」へ意欲高まる 新型コロナ5類移行から1年、大同生命の中小企業アンケート

 新型コロナ5類移行から1年、新規顧客・販路の開拓に向け、あれこれ工夫しながら取り組んでいる中小企業も少なくないようだ。大同生命保険(大阪市)は全国の中小企業経営者を対象に、景況感に加えさまざまなテーマを設定したアンケート調査「大同生命サーベイ」を2015年10月から毎月実施している。2024年4月度の主なテーマは「新規顧客・販路の開拓」「日銀のマイナス金利政策解除」。全国の8230社の中小企業経営者を対象に、4月1日から26日に訪問またはZoom面談で調査を行った。

 

 まず、2023年5月(新型コロナ5類移行時)と比べた新規顧客・販路の開拓への意欲の変化を尋ねたところ、「大いに高まった」(10%)と「やや高まった」(27%)を合わせ、4割弱の37%が「高まった」と回答した。一方、意欲が「低下した」と回答した企業は5%にとどまった(「やや低下した」4%、「大きく低下した」1%の合計)。約6割(59%)は「変わらない」と答えた。

 新規顧客・販路の開拓に「取り組んでいる」と回答した企業は55%。従業員規模が大きい企業ほど、積極的に取り組んでおり、従業員21人以上が73%、11~20人が61%、6~10人が57%、5人以下が46%だった。「取り組んだ施策」の上位3位は、「今後拡充したい市場・顧客ニーズの情報収集・調査分析」(39%)、「新しい商品・サービスの強化」(31%)、「従業員教育の強化」(27%)。「今後拡充したい市場・顧客ニーズの情報収集・調査分析」は「効果的だった施策」としても1位(27%)だった。

 新規顧客・販路を開拓するにあたっての課題として、上位3位は、「開拓に必要な人材の確保」(40%)、「商品・サービス力の強化」(39%)、「市場・顧客ニーズなどの情報収集・調査分析ノウハウの習得」(30%)だった。

 「顧客数」や「売り上げ」についても聞いた。2023年5月比で「顧客数」が「増加した」と回答した企業は29%。業種別では、「宿泊・飲食サービス業」で増加した割合が最も高かった(63%)。新規顧客・販路の開拓に「取り組んでいる」企業については、40%が「増加した」と答えた。

 2023年5月比で、「売り上げ」が「増加した」と回答した企業は35%。業種別では、「宿泊・飲食サービス業」で最も多くの62%が「増加した」と答えた。新規顧客・販路の開拓に「取り組んでいる」企業では、44%が「増加した」と答えた。売り上げに占める「新規顧客・販路」の割合は、理想とする水準と比べてギャップがあり、「新規顧客・販路の開拓」が十分に進んでいない状況が浮かび上がった。   

 新規顧客・販路の開拓に向けて工夫したことや成功したことを、自由回答で聞いた。「展示会や商談会、学会などコロナ禍によりできなかった対面での営業が、コロナ5類移行後はとても反応が良い」(その他サービス業/北海道)、「コロナ禍や5類移行後など状況に合わせて、お店の開店時間の調整、新規顧客獲得のためインバウンド向けのアプローチやお弁当、おせちの配達など色々な方法をとるようになった」(宿泊・飲食サービス業/北海道)と、新型コロナ5類移行後の変化も。

 そのほか、「地元の地域貢献活動に積極的に取り組み、新しいお客さまと出会えた」(その他サービス業/東北)、「作業中のマナーなど指導を徹底していたことで、工事先の近隣宅から依頼があった」(建設業/東北)など、地域のつながりを地道に大切にする声も聞かれた。また、「顧客の支払方法の多様化に応えたことで、幅広い年齢層での受け入れができた」(運輸業/東海)、「地域密着から県外も視野に入れて活動し、積極展開することで売上UPにつながった」(学術研究、専門・技術サービス業/九州・沖縄)などの声もあった。

 日銀のマイナス金利政策解除がもたらす経営への影響については、46%が「ほとんど影響はない」と回答。「マイナスの影響がある」と回答した企業は28%だった(「大きなマイナスの影響がある」3%と「どちらかといえばマイナスの影響がある」25%の合計)。

 マイナス金利政策解除について経営者たちからは、「中小企業としては賃上げをよりしていく必要があるため、厳しい面もあるが国としては進めていくべき」(その他サービス業/北海道)、「マイナス金利が異常であったので、正常に戻り日本経済が活性化することを期待する」(運輸業/東北)など、「短期的にみると融資が借りづらくなるなどマイナス要因があるが、長期的にみると経済効果によって顧客の購買意欲が向上し売上上昇も期待できるので何とも言えない。経済効果に期待したい」(小売業/北陸・甲信越)などの評価も。

 一方、「今後の設備投資、運転資金など借入金の金利負担増加が不安」(製造業/南関東)、「直接影響はないが、お客さまの財布のひもが固くなる可能性があるので、そこが心配」(建設業/東海)、「物価高や金利上昇などで働く人の環境が悪くなり、より人手不足が深刻になるのではないか」(医療・福祉業/四国)などの不安も寄せられた。