カルチャー

親子で一緒に食の現場を理解 雪印メグミルク、ライフが食育を推進する催し

乳搾りを体験する親子=横浜市の「雪印こどもの国牧場」

 子どもたちなどに食の大切さを伝える「食育」を推進する、雪印メグミルク(東京都新宿区)とス―パーマーケット「ライフ」を展開するライフコーポレーション(大阪市)はこのほど、雪印メグミルクの海老名工場(神奈川県海老名市)と京都工場(京都府南丹市)を主会場に、親子で「食の現場」について学ぶ催しを開催した。参加した親子は、乳牛の乳搾り体験や乳製品工場の見学、牛乳の栄養素・ス―パーの仕組みを知る食育講座を通じて、人々の食生活を支える食の生産・流通・販売現場への理解を深めた。

 この催しは、雪印メグミルクとライフが共に重視する食育活動をさらに協力して広げようと、今年3月に初めて、今回と同じ海老名・京都両工場を主会場に開催した。予想以上に好評だったため、2回目となる今回の開催を決めた。

 海老名工場の催しは10月19日に開かれ、7組の親子計14人が参加。ライフで雪印メグミルク商品を購入した親子の中から抽選で選ばれた。

 一行はまず、横浜市の「雪印こどもの国牧場」で牛の乳搾りを体験した。牛乳など乳製品の恵みをもたらす乳牛に触り、昔ながらの手作業で乳を搾った。牛を怖がる幼児には、親がそれとなく手を添えてやり、普段できない貴重な経験をさせていた。

 次に向かった海老名工場では、タンク(ミルク)ローリーで工場に運ばれる原料乳を貯蔵する巨木のような巨大ミルクタンクや、牛乳・ヨーグルトのパック詰め機械など、原料乳を次々と乳製品にするさまざまな機械が並ぶ「製造ライン」を見学者スペースからガラス越しに見学した。

 店頭で見る牛乳・ヨーグルト製品がベルトコンベアーの上を次々とすべるように進む最新鋭の製造ラインのスピード感を、子どもたちはガラスに顔を近づけて体感していた。

参加者にあいさつする雪印メグミルク首都圏支店の佐々木健二支店長

 一連の製造ラインを説明した工場の説明スタッフは、多くの人が気付いていない、牛乳の紙パックだけにある「先端の小さな半円状の深さ数ミリの浅いくぼみ」についても説明した。乳製品業界で「切り欠き」と呼ばれる、目が不自由な人のための「細工」で、切り欠きを触る指の感触を頼りにすれば、目が見えなくても店頭に並ぶたくさんの「紙パック飲料棚」の中から迷うことなく牛乳を選ぶことができる。健康維持に必要な基本的な栄養素を含む牛乳をすべての人に届けるための工夫の一つ、という。

 海老名工場は、全国に16ある雪印メグミルク工場の中で最大の生産量を誇る主力工場。品質維持のための最新鋭の検査設備を備えるほか、環境面にも、工場排出廃棄物のリサイクル率100%を達成するなど配慮する。ライフのプライベートブランド(PB)牛乳も製造するなど、自社以外のブランド製品の生産も請け負っている。

牛乳に含まれるカルシウムの豊富さを、長い模造紙を使った視覚的表現で説明する雪印メグミルクのスタッフ(右)
講師役のライフコーポレーションの谷口真美さん

 最後に工場内で開いた、牛乳の栄養素・ス―パーの仕組みを知る食育講座では、雪印メグミルクのスタッフとライフコーポレーションの谷口真美さんを講師に、体の成長に欠かせない栄養素を含む牛乳の特長や、普段見ることはできないライフのバックヤード(調理場や商品発注室など)・物流センターの現場の様子を学習した。

 雪印メグミルクのスタッフは、カルシウムやタンパク質など牛乳に含まれる栄養素の豊富さを子どもたちにも理解してもらうために、例えば牛乳の中に含まれるカルシウムの量を、骨のイラストをたくさん描いた「長い模造紙」で視覚的に体感させるなど、表現方法を工夫して分かりやすい説明を心掛けていた。

牛乳パックを使った紙工作を完成させた親子

 また6枚再利用するとトイレットペーパー1個が作れる、牛乳パックの紙質の良さを体感しながら物を大切にする気持ちを育む狙いで実施した牛乳パックを使った「紙工作」を親子に指導。親子は、切り込みを入れるなどあらかじめ工作用に準備された紙パックを使い、牛や牧場の垣根などの紙片を切り貼りして、それぞれの個性を反映させた「紙牧場」を制作した。

 ライフのバックヤードなどの説明では、谷口さんが、マグロを刺身にする調理場や冷凍庫など、スーパーの“舞台裏”を動画で解説。大量の食品を各店舗に配送する機能的な物流センターの映像も流し、食品がスーパーに並ぶまでの食品配送の仕組みも述べた。

 谷口さんは「スーパーではさまざまな作業をしてたくさんの食品を店頭に並べています。その中でも一番売れる食品は、今日皆さんがたくさん学んできた牛乳です。健康を守るためにはバランスの良い食事が大切なので、普段不足しがちな野菜を『ファイブ・ア・デイ』を合言葉に、1日に5皿以上摂取することを心掛け、健康的な食生活を送ってください」と呼び掛けた。

谷口真美さん(左)の話を聞く親子

 ライフでは、小学校に担当者が出向く「食育出前授業」にも力を入れており、谷口さんは「スーパーの舞台裏を見せることで、食品ス―パーに対する子どもたちの関心が高まるとうれしいですね」と話す。

 食に関する体験・見学・講座を終えた母親(44)=相模原市=は「牛乳が苦手の娘が牛乳に少しでも興味を持ってくれたらと思って参加しました」と参加動機を語った。一方、動物好きという小3の娘(9)は「牧場の乳搾りが一番楽しかったよ」と牛乳よりも乳牛に心引かれたこの日の楽しい体験を教えてくれた。

 雪印メグミルク京都工場(京都市)での催しは10月26日に開かれ、抽選で選ばれた11組の親子計23人が参加。京都府南丹市の谷牧場で乳搾り体験をしたり、雪印メグミルクの近畿地方の主力工場である京都工場で乳製品製造ラインを見学したりして、食の生産現場への関心を高めた。

 食育講座は、海老名工場と同様、雪印メグミルクとライフの担当者から、乳製品の優れた栄養素やバランスの良い食事や不足しがちな野菜についての説明を聞き、健全な成長や健康を維持するための理想の食生活を学んだ。