補聴器や周辺機器の製品開発や聴覚ケアの普及に取り組む「オーティコン補聴器」(川崎市)は11月4日、大阪市のザ・フェニックスホールで「オーティコンみみともコンサート2024」を開催した。一般公募での抽選や招待で選ばれた約300人が「ウィーン・フーゴ・ヴォルフ三重奏団」の演奏を楽しんだ。
同コンサートは、年齢や聴覚障害の有無にかかわらず誰もが最上の音楽を楽しめる場として2014年に初めて開催され、今年で11回目。補聴器は耳の友達であり、生活をより楽しくするツールとして身近に感じてもらうためにコンサート名は「みみとも」としたという。
会場には、磁気に変えたマイクの音を補聴器が感知して直接音声を聞くことができる「ヒアリングループ(磁気誘導)」や、出演者の話を要約して字幕表示するモニターが設置されるなど、難聴者でもクラシック音楽のステージを存分に楽しめるための工夫が随所に凝らされていた。
「ウィーン・フーゴ・ヴォルフ三重奏団」を結成したダニエル・ゲーデ氏は、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の前コンサートマスター。観客はゲーテ氏ら3人の音楽に聞き入り、「ハナミズキ」など日本の人気曲のメドレー演奏では会場一体となって手拍子するなど、大きな盛り上がりを見せた。
近年、難聴が認知症やうつ病のリスクを高めることが明らかになり、聞こえの問題に注目が集まりつつある。この日の会場には、「簡単聞こえのチェック」を受けられるブースも設けられ、多くの家族連れが立ち寄っていた。
コンサートを主催したオーティコン補聴器のプレジデント(代表)齋藤徹氏は「補聴器ユーザーの中には、音楽が好きなのにハウリングで周囲に迷惑をかけたくないという理由からコンサートを敬遠する人がいる」ことや、「高齢化社会の日本でも、難聴の問題や補聴器の必要性を理解している人はまだ少ない」という現状に触れ、「今後も難聴者が適切な聴覚ケアを行いながら楽しめる場を提供することで、多くの人の生きる活力につながれば」と話した。