カルチャー

セナのマクラーレン・ホンダも展示 山梨県立博物館で、人と車の歴史と未来をたどる特別展

 アイルトン・セナがF1で走らせたマクラーレン・ホンダを見ることができる、というだけで、駆け付けたくなる人は多いはず。山梨県立博物館では、開館20周年特別展「みんなのクルマ展 人と自動車の歴史と未来」を9月1日(月)まで開催している。今や関税問題で振り回される自動車業界だが、振り回されてしまうのは、それだけクルマが日本の代表的な産業であることの証左。その歴史と、日常生活にさまざまな形で影響を及ぼしてきたクルマの変遷を紹介する特別展だ。

 博物館がある山梨は、古くから日本の交通の結節点だった。人々や牛馬は峠を越え、川を船が走り、さまざまな人や物資、文化が行き交った。その流れとスピードを大きく変えたものの一つが「クルマ」。華族やごく一部の富豪しか乗れなかったクルマは、やがて庶民の「足」となり、身近な存在へと変わっていった。クルマは時代を通じてステータスシンボルだったり、憧れの対象、未来の象徴であり続けている。

 展示車両の目玉は、なんといってもマクラーレン・ホンダMP4/4(1988年、#12)。1988年のF1シーズンで16戦中15勝と圧倒的な戦績で、マクラーレン・ホンダがアイルトン・セナとコンストラクターズ/ドライバーズのダブルタイトルを獲得した「無敵」のF1マシンだ。ターボ時代を象徴する低いフォルムとシンプルなスタイルが魅力で、動態保存された貴重な車両を見ることができる数少ないチャンスだ。

 純国産車の先駆けとなった、トヨペットクラウンRSも。展示は初代マイナーチェンジのRS21(デラックス)で当時からのナンバープレートも貴重だ。近未来的なスタイルと世界初の量産型2ローターロータリーエンジンを搭載したコスモスポーツは、社外委託走行試験を行った試作車両の1号車。そして世界に通用するグラン・ツーリスモとして開発され、映画でも有名なトヨタ2000GT(後期型)、大衆への普及に貢献したスバル360DELUXなど、この機会に見ておきたい希少車がそろっている。

 クルマの歴史をたどる展示は、そもそも「クルマ」って何?という問いかけから始まる。「空飛ぶクルマ」のように、地上を走る自動車の枠を超えてクルマという概念を捉えるようになっている現代。車が大衆化してきた歴史をたどり、それぞれの時代を彩った魅力的な車もあわせて紹介しながら、自動車と人との関係性を探っていく。

 そして乗り合いバスの歴史をひもとく写真や、バスツアーのパンフレットもある。個人の車所有が一般化する前、人々が日常的に乗っていた自動車は乗り合いバス。観光や日常の移動手段として利用されるようになった東京の乗合自動車事業の拡大や、山梨県のバス事業のはじまりも紹介されている。ほかにも未来の車の応募作品、ルネ・ラリックのカーマスコット「大トンボ」、懐かしいクルマのカタログ、クルマを題材にした漫画やスーパーカー消しゴムなど、おもちゃにも広がりを見せるクルマの世界を垣間見ることができる。

 山梨県立博物館開館は9時から17時まで(入館は16時30分まで)。毎週火曜日休館(8月12日は開館)。観覧料は一般1000円、大学生500円。高校生以下、山梨県在住の65歳以上、障がい者は無料。