花があると気持ちが和む。なんとなくそう思うだけでなく、実際に玄関まわりに植木や花がある住宅に住む高齢者はうつが16%少ない、ということが千葉大学の調査で分かった。植物がメンタルヘルスを支える可能性があるということだ。
調査したのは、千葉大学予防医学センターの吉田紘明特任助教、花里真道准教授、同大大学院工学研究院の鈴木弘樹准教授らの研究チーム。うつは世界的に重要な公衆衛生課題で、特に高齢者に深刻な影響を及ぼすことが分かっている。身体的・認知的機能の低下をもたらし、早期死亡リスクを高めるからだ。住環境とうつについては、住宅内の物理的環境や設備が高齢者のうつと関連することが分かっており、住宅の内外をつなぐ玄関まわりの特徴(前庭やポーチ、植木やプランターなどの存在)についても、身体機能や近隣住民との交流と関連することを報告した研究はあるが、うつとの関係についてはこれまでほとんど研究されていなかったのだという。
そこで東京都内に住む、65歳以上で要介護認定を受けていない地域在住高齢者2046人(女性1141人、男性905人、平均年齢は約75歳)を対象に、2022年1月と2023年10月に自記式質問票で調査を実施。住宅の玄関まわりの特徴とうつの関連を調べた。その結果、2023年時点のうつは458人(22.4%)で、集合住宅居住者245人 (23.1%)、戸建て住宅居住者 194人(21.5%)、住居不明者は19人 (22.6%)。玄関まわりに植物がある人は、ない人と比べてうつの割合が16%低く、集合住宅居住者では、植物がある人はうつの割合が28%低かった。戸建て住宅居住者でも、植物がある者はない者と比べてうつの割合が15%低かったという。
因果関係は明らかにできないものの、植物の手入れ中に近隣住民とのあいさつや会話が生まれやすくなるなど、社会的交流の増進や、植物の世話を通じて身体活動が日常的に行われることで、うつの予防や緩和に寄与した可能性、自然とのふれあいを通じてストレスが軽減され、メンタルヘルスの改善に役立った可能性などが指摘されている。
研究論文は、予防医学の専門誌Preventive Medicine Reportsで公開されている。