美容室で日々廃棄される髪の毛を、農業で活用する――。自然と都市、美容と農業をつなぐ新たな循環の試みが、山梨県身延町でスタートした。このプロジェクトは、山梨県身延町の在来種「あけぼの大豆」を栽培する「うりぼうの里」の依田氏と、横浜市のヘアサロン「hairmake arch」のオーナー・山田氏、人毛や動物の毛を使ったアップサイクル活動などに取り組む一般社団法人「Matter of Trust Japan」(東京)による共同プロジェクト。美容室から出る髪の毛を農業の分野で活用する実証的な取り組みだ。
髪の毛に多く含まれる成分「ケラチン」は、たんぱく質由来の天然素材で、土に分解されることで、微生物の働きを助けながら保水性・通気性を向上させる効果があるとされているという。美容室では、日本国内だけでも年間数百トンもの髪の毛が焼却処分されているといわれている中、海外の実例として、南米・チリでの「Matter of Trust Chile」による「Agropelo」プロジェクトでは、人間の髪やペットの毛を機械で織り合わせたマットを作成し、水資源が貴重なアタカマ砂漠地域などで作物の根元に敷設。その結果、水の蒸発を71%抑制し、灌漑(かんがい)水の使用量を最大48%削減。さらに、髪に含まれる窒素・カルシウム・硫黄などの栄養素により、作物の生育量・収量が30%以上向上した例が報告されているという。
今回、見延町でも、新たな髪の毛の活用法として山梨県身延町の豊かな自然環境の中で代々受け継がれてきた「あけぼの大豆」の栽培と組み合わせることで、地球にやさしい農業のモデルづくりを目指す。大豆収穫期までの約5カ月間、発育経過や土壌の栄養素のモニタリングなどを行い、今後はこの試験的取り組みを全国に広げていきたいという。