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旧石器時代の石器はどうやって作っていた? 平城宮跡資料館で出土品の特別展

法華寺南遺跡から出土した石器の接合資料

 奈良市の「平城宮跡資料館」(奈良文化財研究所・奈良市)で10月18日(土)から、秋期特別展「ナラから平城(なら)へ-旧石器からはじまる3万年の歴史-」が開催される。同展では、平城宮・京で発見された後期旧石器時代の石器を中心に、飛鳥時代までの出土品を紹介する。

 平城宮跡周辺では後期旧石器時代(3万8000~1万6000年前)の遺跡や石器がいくつか見つかっているという。特に、法華寺南遺跡の発掘調査では、約3万年前の後期旧石器時代の石器が数多く出土した。特別展の開催にあわせて、当時の法華寺南遺跡の様子を推測で再現したイラスト (絵:田中さとこ氏) が描かれた。奈良文化財研究所が、このイラストを作成するにあたって検討したエピソードを紹介している。

 法華寺南遺跡で発見された後期旧石器時代の石器は、やりの先端に付けていたと考えられるナイフ形石器などの道具類のほか、道具を作る過程で生じたかけらなど。法華寺南遺跡最大の特徴は、当時の石器を作る技術を読み取ることができる点。出土した石器どうしをつなぎ合わせることで、どのような手順で石器を割っていたかが分かるという。しかし、石器を作る際に素材となる石をどのように手で持っていたのか、打ち割る際の姿勢はどのようなものだったのか、人の体の動かし方に関わるような細かいことは、石器からだけでは分からない。復元画を作成する上で避けて通れない問題であり、研究員で検討したという。

  特に大変だったというのが、作業時の姿勢の描写。現代では椅子に座って作業ができるが、旧石器時代に椅子はない。座れる大きな石なども、どこにでもあるとは限らない・・・。そのため、どのような姿勢で石器を打ち割っていたのか、研究員同士で相談しながら検討したという。「あぐら座り」のほか、いわゆる「うんこ座り」である蹲踞(そんきょ)など、さまざまな姿勢を検討。しかし、素材となる石の持ちやすさや、打ち割った際に剥片が粉々になってしまうリスク、自身がけがをしないための安全性の確保など、全ての要件を満たしそうな姿勢が見つからなかったという。最後に出た案が、「片膝立ち」。この状態で素材を股(もも)の外側からはみ出るように持って固定してハンマーを振り下ろせば、破損リスクが少ないかつ安全に石器を作ることができそうだという結論に至ったという。これが唯一の正解というわけではなく、さまざまな議論を経て歴史のイメージが作られていくことをあらためて感じたという。

 こんなエピソードを知った上で展示を見れば、新たな学びにもつながるかもしれない。また、10月25日(土)には関連イベントとして、第133回公開講演会「奈文研の旧石器研究」も開催する。さらなる復元画作成の背景を解説するほか、奈文研がこれまで行ってきた旧石器研究の歴史、最新の研究成果、全国の魅力あふれる旧石器時代遺跡などについて聞くことができる。申込期間は10月6日(月)まで。問い合わせは奈良文化財研究所 総務課広報企画係、電話0742-30-6753。

 平城宮跡資料館は入館無料。開館時間は9時~16時30分。休館日は月曜(月曜が祝日の場合は翌平日)・年末年始。