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堆積物から生息当時の環境を復元 再発見されたナウマンゾウ化石

 今から十数万年以上前、現在の東京都営地下鉄新宿線浜町駅の近くで、一頭のナウマンゾウが人知れず息を引き取った。「人知れず」なのは当然で、人類はまだ日本列島に渡ってきていなかった時期。滋賀県立琵琶湖博物館は、このナウマンゾウの化石に付着していた堆積物から、生息当時の環境を復元することに成功した。

 この化石はナウマンゾウ「浜町標本」と呼ばれていて、2023年に再発見されたもの。再発見、というのは、この化石の発見は実は1976年、地下鉄工事が行われた時にさかのぼるからだ。当時クリーニング作業に参加していた高校生の間島信男さんが許可を得て大切に保管していたのが、頭骨に付着していた堆積物。47年を経て、かつて勤務していた高校に着任した間島さんが、地学教室の戸棚に保管したこの堆積物を数十年ぶりに再発見したのをきっかけに分析が始まった。

 その結果、浜町標本は満潮時にのみ海水に覆われる低位塩性湿地のような環境に埋積していたことが推定されたという。また、周辺の植生はブナが優勢で、サワグルミ属、クルミ属、ニレ属、ケヤキ属、ハンノキ属などを含む落葉広葉樹林の存在が復元された。2025年12月発行の『化石研究会会誌』に論文「ナウマンゾウ“浜町標本”の付着堆積物試料から得られた珪藻(けいそう)化石および花粉化石について」(高橋啓一・大塚泰介・林竜馬・間島信男著)というタイトルでその内容が掲載されている。