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農家も喜ぶジュース 野々村真希 農学博士 連載「口福の源」

お店のショーケースには個性的なアイスもたくさん並ぶ

 群馬県高崎市にあるコールドプレスジュースのお店「koyomi」で、ジュースを飲んでいる。売られているジュースには、ブラックジャックとか紫式部とか、面白い名前がついている。旬にたくさん採れた野菜を柔軟にジュースに使用できるように、あえてフレーバーを表さない名前にしているのだ。なるほどの工夫である。そしてこのジュースには規格外の有機農産物が使用されている。規格外農産物とは、形や大きさ、傷の有無などが規格に合わない農産物のことで、出荷されずに廃棄されることもよくある。このたびはこの規格外農産物の活用事例としてkoyomiを知り、研究室の学生たちを引き連れて調査に伺っている。

 ところで、日本の食品ロスは年間400万〜500万トンと報告されているが、この推計値には産地で廃棄される規格外農産物は含まれない。事業者から排出される食品ロスの量は、食品リサイクル法に基づいて食品関連事業者が毎年報告する食品廃棄物発生量から推計されるのだが、その食品リサイクル法は、農家など第一次産業の事業者が対象となっていないからだ。第一次産業の食品ロスを把握するしくみが構築されていないということだ。国際的には第一次産業の食品ロスは推計されており、その割合は生産された野菜・果物の26%ともされる。それに鑑みると、量を明らかにする意義は大きいはずだが、日本は一向に推計する気配がない。推計することは、農家に削減ノルマを課すことになると懸念しているのだろうか? 「測らない」という意志すら感じる今日この頃である。

 一方、規格外農産物に対する世間の関心は確実に高まっており、近年その活用事業が全国でたくさん生まれている。学生の関心も高く、卒論などの研究対象になることもしばしばで、このたびのkoyomiへの調査もその一環だ。これまでも、横浜市の農家の規格外野菜を乾燥させて使用したパスタキット「YOKOHAMA Dry」を販売する合同会社グロバース、三浦半島・湘南の未利用農産物を加工・販売する事業者Motteneなどへ、学生を連れて伺ったことがある。

 地域に密着して事業を行うこれら事業者に共通して注目されるのは、単に「もったいない」という理由だけで規格外農産物を利用しているのではなく、規格外であっても農家に利益が還元されることを重視して事業を行っているところである。規格外農産物の活用は、通常出荷する農産物と同じように、場合によってはそれ以上に、収穫や梱包、輸送にコストがかかる。一方で、規格外は一般に価格面で低く評価される傾向にあるため、そのコストと価格の見合わなさから農家が活用に後ろ向きになるという側面がある。そのため、農家の経営上のメリットをいかに生むかが、活用の一つの重要なポイントになる。全国にたくさん事業が生まれる中で、地域に根差す事業者においてその試行錯誤も始まっているのである。

 この動きを国はどう見ているのだろう。生産段階の食品ロスの実態を把握することと農家に削減の責任を負わせることは別であろう。まずはその実態をきちんと明らかにしてほしいと、ずっと思い続けている。

野々村真希(ののむら・まき)京都市出身。京都大学農学部卒。2019年から東京農業大学勤務。研究内容は食品ロス、食生活など。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.35からの転載】