「学歴」と「食暦」、どちらも「れき」と読みますが、その意味は大きく異なります。学歴の「歴」には「止(とまる)」の文字が使われ、過去の積み重ねを示します。一方で、食暦の「暦」は「こよみ」。未来へと続く新しいページをめくる行為を表します。つまり、日々の食事の選択が、これからの健康や人生の質を決めていくということです。
平均して、1日3回、年間にすると約千回食事をします。この一食一食が未来の自分をつくる「食暦」となり、その積み重ねが健康を左右します。学歴が過去の歩みの証明であるように、食暦は未来のあなたの姿を映し出す鏡です。食事を通して、自分自身の未来をより良いものへと築いていきましょう。
近年、健康寿命を延ばすことが社会的な課題となっています。長生きするだけでなく、最後まで自分の口で食べられることが重要です。そのためには、食事に対する意識を変え、「食べる力」となる口腔(こうくう)機能を育むことが不可欠です。食暦は、口腔機能を高めるカギとなります。
社会全体の価値観が大きく変化する中、いまだに子どもに過度な学歴を求める一方で、食習慣にはあまり注意を払わない現状があります。低学年から塾通いや習い事で多忙な子どもたち。テストの点数、偏差値を重視し、健康よりも知識の詰め込みが優先されがちです。さらには、頑張ったご褒美にゲームやスマホ。小学校中学年頃から視力の低下が急増しても、それを深刻に受け止める親は多くありません。日々、孤食、個食の食暦で、健康を犠牲にして得た学歴が、子どもの未来を明るくしているでしょうか。
世界的にも高い日本の子どもの自殺率。G7(先進7カ国)各国における10~19歳の死因において、自殺が1位になっているのは日本だけです。学歴がどれほど立派でも、心身の健康が損なわれれば、人生の選択肢は狭まってしまいます。知識を得ることも大切ですが、それ以上に「食べる力」を育むことが、豊かな人生を生きるためには不可欠です。
1996年に「成人病」は「生活習慣病」と改められました。それほど、日々の生活習慣が健康に及ぼす影響が大きく、幼少期からの食習慣が生活習慣病のリスクを高め、将来を左右しています。
日々の良食習慣こそ口福の源です。「今日の食事が、未来の自分をつくる」。そんな思いを込めて、毎日の食事を大切にしていきましょう。