このように、サービス精神旺盛なトークで、リスナーを常に楽しませる福山。一方で現実的な視点に立った、厳しくも優しいコメントもまたその魅力の一つだ。
コロナ禍のために、学園祭などが中止となり、「思い描いていた高校生活が奪われた」と悔しさをにじませる、高校3年生のリスナーに、福山はこんなメッセージを送った。
「コロナ禍の高校生活では、確かにいろんなことができなかったと思う。でもそれは、君だけじゃなくみんなも同じ。その中で、大人も生徒たちも知恵を絞って、工夫を凝らしてなんとかしようと頑張った。今は(コロナ禍は)そのための時間だったと思うしかない」
さらには、「起きてしまったことに対して、感情的になってもしょうがない」と語る場面もあった。
「確かに残念なことも多かったと思う。でも君は後輩に向けて『僕らができなかった行事などを経験し、学校生活を楽しんでほしい』と言っている。もしコロナ禍を経て、君の中に、他者への想像力や思いやりというものが、より強く生まれたのだとすれば“収穫はゼロではなかった”と言えるのではないだろうか」と優しく語り掛けた。
今年8月に行われた完成披露試写会の最後のあいさつでは、映画の内容に絡めて、自身の人生観も語った。
「人生には予想もしなかった悲しい出来事が起こり得る。生きていると、そういうことを知っていくわけですが、その突然の別れや苦しみを、どう乗り越えていけばいいのか…。僕の個人の感想ですが、どちらかというと、苦しみの方が多いのが人生のような気がします。そんな中でも『生きていて良かったな』『出会えてよかったな』と思える幸せな瞬間がある。その瞬間に出会うために、日々、いろんなしんどいことや苦しいことを乗り越えて、これからも生きていくんだと思います。どうか、皆さんの旅が幸せであることを願っています」
この言葉に、胸が震えた観客も多かっただろう。これからも福山の発する“メッセージ”に注目していきたい。
(山中京子)