これは、日本の喜劇王といわれたエノケンこと榎本健一の晩年の逸話と重なるところがある。
それは、体が不自由になったエノケンが自殺を図った際に、ガス栓をひねって「さようなら」と言ったら、その声があまりにも大きかったために家人に気付かれた。
電気コードで首をくくろうとしたら転倒して失敗したというものだ。特に後者は、この映画にも似たようなシーンがあった。
また、オットーが心臓の肥大という病を持つことを知ったマリソルが、思わず「ハートが大きいのね」と笑ってしまい、それにつられてオットーも笑顔になるシーンもあった。
これらは決して死や病をちゃかしているのではなく、シビアな状況でも、人は笑いで救われることもあるということを表しているのだろう。だから、たまにはこういう映画も必要なのだ。
(田中雄二)