2024年が幕を開け、1カ月ほど経ちましたね。初詣に行かれた方も多いと思いますが、今年の干支(えと)は「甲辰(きのえたつ)」、60年に一度の歴史的な年で、「旧来のしきたりや慣習を破り、物事の始まりや成長」という意味があるのだそうです。そんな、おめでたい干支にあやかり、全国のお寺・神社を巡ってみたくなりますよね。
神社仏閣は、温泉地にも数多く存在しています。医学が発展する以前は、神秘的な効果がある温泉を神様として奉るために、温泉寺や温泉神社が建てられ、今でもその姿を残しています。静岡県の熱海温泉エリアにある「来宮(きのみや)神社」は、古くから熱海の地を守る神社。「甲辰」の今年は、例年よりも多くの参拝者でにぎわいそうですね。そんなパワースポットの傍らの温泉に入れば、さらに運気も上がるのではないでしょうか。今回は、来宮神社と温泉をセットで楽しむのに最適な温泉旅館「熱海来宮の湯 松月(しょうげつ)」をご紹介します。
東海道新幹線の熱海駅でJR伊東線に乗り換えて一駅の「来宮駅」。熱海の高台に位置し、街と海の景色を一望できるロケーションです。駅前は、昔ながらの個人商店や、老舗の飲食店、住宅やマンションが数多く立ち並んだ、落ち着いた環境。その風景を眺めながら、坂を下ること約5分で「熱海来宮の湯 松月」に到着します。熱海の繫華街から少し離れた住宅街の中にある宿は、大きな松の木が印象的な純和風の外観。築70年以上とのことですが、2018年に全館をリノベーションし、リニューアルオープンしたそうです。館内も昔ながらの和の設えを生かしつつ、壁や照明、床材は一新され、とてもきれいになっています。
ちなみに、パワースポットの「来宮神社」へは、駅から徒歩5分ほど。お宿からも徒歩約5分と、至近距離にあります。
お風呂は、男女別の内湯のみ。男湯は、全面に張り巡らされた薄ピンクのタイルに、レンガ調のタイルの柱やアーチがアクセントの、レトロで洋風な雰囲気。女湯は、シンプルな暖色系のタイルが張り巡らされたモダンな浴室になっています。
温泉は、1933年(昭和8年)から、来宮神社のほとりに湧く歴史的な源泉「来の宮湯」を中心に、3源泉をブレンドしたものを引湯。供給湯温が60度を超える高温なので、適温にするために加水調節していますが、「掛け流し」で湯船に提供しています。男女とも、浴槽は数人入ればいっぱいの大きさなので、温泉の鮮度も保たれ、湯のコンディションは良好です。
泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物泉。無色透明のお湯は、塩気を感じる鉱物の香りが漂います。舐(な)めてみると薄い塩ダシ味と苦味を感じ、上品なお吸い物を飲んでいるような味わい。ツルツル感と引っかかるようなギシギシ感の肌触りで、ゆっくり漬かっていると、体を包み込むような感覚が極上です。湯上りは、しばらくたっても汗がひかないぐらい、体の芯まで温まっていました。
松月の宿泊プランは「素泊まり」のみ。朝は、トースト、ゆで卵、バナナ、果物、コーヒーなどの無料軽食が食べられるため、実質は最近増えてきた「B&B(ベッド&ブレックファスト)」スタイルの宿です。
宿から熱海の商店街へは徒歩5分ほど。夕食は、繁華街の路地にある老舗居酒屋「魚庵(ととあん)」でいただくことにしました。イサキ、メバル、ホウボウ、タチウオ、スズキの刺し身盛り合わせ、カサゴやマンボウの唐揚げなど、地元で水揚げされた海産物に舌鼓。それを肴(さかな)に、静岡の地酒がスイスイ進みました。
熱海の夜を堪能した翌朝、「来宮神社」への参拝で、今回の旅の締めくくりです。
宿の中で温泉に入り、食事を済ませ、部屋でゆっくりする過ごし方もいいものですが、温泉街を散策したり、地元の居酒屋で食事をしたり、温泉地をアクティブに楽しむのも、すてきな旅時間です。今回の旅は、温泉と神社のダブルパワースポットの効果で、心も体も芯から元気になれました。きっと御利益も倍増ですね。
【熱海温泉 熱海来宮の湯 松月】
住所 静岡県熱海市上宿町19-5
電話番号 0557-81-2878
【泉質】
ナトリウム・カルシウム-塩化物泉(低張性 弱アルカリ性 高温泉)/泉温62.2度/pH:7.7/湧出状況:不明/湧出量:不明/加水:あり/加温:なし/循環:なし/消毒:なし ◆掛け流し
【筆者略歴】
小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2,500以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。