『神さま待って!お花が咲くから』(2月2日公開)
小児がんで幼い頃から入退院を繰り返してきた11歳の少女・森上翔華(新倉聖菜)は、主治医の脇坂(北原里英)の許しを得て、6年生の1学期から再び学校へ通うことに。
ところが、翔華が目にしたのは、まとまらないクラスと自信を失った気弱な担任教師(秋本帆華)の姿だった。奇跡を信じる翔華は、周囲の人々を笑顔に変えていくことを決意。そんな彼女の存在は、次第に人々の心に変化をもたらしていく。
広島県の福山を舞台に、小児がんを患いながらも、12年の生涯を明るく生き、絵本『そらまめかぞくのピクニック』を残した実在の少女のエピソードを基に描く。
オーディションで選ばれた新倉が映画初出演で主役を務め、翔華の両親を布川敏和と渡辺梓、小学校の校長を高畑淳子、入院患者を曽我廼家寛太郎、病院に現れる謎の女性を竹下景子が演じる。監督は『天心』(13)『ある町の高い煙突』(19)と“実録もの”を撮った松村克弥。今回も形は違うが実録ものだ。
子どもを主人公にしたいわゆる“難病もの”は数多く作られており、見ていてつらくなるのは必定。この映画も主人公の翔華が明るくポジティブに振る舞い、新倉も好演を見せるので、余計けなげに見えてやるせない思いがしたが、よくある“お涙ちょうだい物”にはしなかった点に好感を持った。
製作意図としては、翔華が周囲に与えた影響を通して、彼女がまいた種が実る様子や、彼女は確かに生きたという証しを描きたかったのだろう。その点では、実話ではないが、ジョン・タートルトーブ監督、ジョン・トラボルタ主演の『フェノミナン』(96)と重なるところがあると感じた。
(田中雄二)