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【週末映画コラム】気持ちのいい人情喜劇『あまろっく』/山田太一の小説をイギリス人監督が映画化『異人たち』

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『異人たち』(4月19日公開)

(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 12歳の時に両親を交通事故で亡くし、孤独な人生を歩んできた40歳の脚本家アダム(アンドリュー・スコット)は、ロンドンのタワーマンションに住み、両親の思い出を基にした脚本の執筆に取り組んでいた。

 ある日、幼少期を過ごした郊外の家を訪れると、そこには30年前に他界した父母(ジェイミー・ベル、クレア・フォイ)が当時のままの姿で暮らしていた。

 それ以来、アダムは足しげく実家に通っては両親のもとで安らぎの時を過ごし、心が解きほぐされていく。そんな中、アダムは同じマンションに住む謎めいた青年ハリー(ポール・メスカル)と恋に落ちる。

 脚本家・山田太一の長編小説『異人たちとの夏』を、『さざなみ』(15)『荒野にて』(17)のイギリス人監督アンドリュー・ヘイが映画化。日本でも大林宣彦監督が映画化(88)した喪失と癒やしの物語を、現代イギリスに舞台を移して描いた。

 盆を背景にした日本的な原作小説をどのように換骨奪胎したのかに興味が湧いた。ヘイ監督は自身の体験や心情を入れ込みながら、主人公を同性愛者とし、日本とは違う両親との関係性や主人公が抱える心の傷を描くなど、繊細なタッチの中で現代性や独自性を出してはいるが、いささか個人的な感情を反映させ過ぎた感がある。

 この場合、市川森一が脚色した大林監督の映画の方が原作の良さを生かしていると感じた。

(田中雄二)