『恋するプリテンダー』(5月10日公開)
弁護士を目指してロースクールに通うビー(シドニー・スウィーニー)は、街角のカフェで偶然知り合った金融マンのベン(グレン・パウエル)と最高の初デートをするが、ちょっとした行き違いが原因で燃え上がった恋心も一気に冷めてしまう。
数年後、そんな2人がオーストラリアで行われるビーの姉の結婚式で再会することに。真夏のリゾートウエディングに皆が心躍らせる中、2人は険悪なムードを漂わせる。
だが、復縁を迫る元彼から逃げたいビーと元彼女の気を引いてよりを戻したいベンは、互いの望みをかなえるために恋人同士のふりをすることになるのだが…。原題は「anyone but you=あなた以外の誰か」だが、この場合、「プリテンダー=ふりをする人」と付けた邦題も的を得ている。
コロナ禍の影響もあってすっかり鳴りを潜めた感があった“お気楽なラブコメ”が久しぶりに復活した。舞台は海外のリゾート地、実は引かれ合っているのに仲違いした男女が、いい人ばかりの周囲を巻き込んでの大騒動を繰り広げながら、最後は…というのは、まさにラブコメの王道だ。
そんな結末は最初から予想がつくから、要はそこに持っていくまでをどう見せるかが勝負の分かれ目となる。その点、この映画は、“恋人のふりをする”といういかにもわざとらしい設定を持ってきて、見る者に「早く自分の気持ちに正直になれ」とじれったさを感じさせるところがずるい。そんな中で、コケティッシュな魅力を発散するスウィーニーがなかなかいい。
監督は「ピーターラビット」シリーズのウィル・グラック。ビーの姉は同性婚というところが今風だが、グラック監督は『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』(21)の時に、「今世界中にはいろいろな家族の形があるので、その多様さを表現した」と語っていたので、そうした考えがこの映画にも反映されているのかもしれないと思った。
(田中雄二)