未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。今回は、弁当作りを通じて子どもたちを育てる「弁当の日」の提唱者・竹下和男(たけした・かずお)先生が、ペットについての悩みにアドバイスします。
ペットを飼いたいと言うけれど・・・ 本当に世話できる?
【質問】
小学2年生の息子が、「犬を飼いたい」と言っています。しかし、わが家は共働きだし、息子がきちんと世話をしてくれなかった場合に、親が代わりに世話をするようになるのは避けたいです。息子は、自分自身の学校の宿題やら身支度もままならないのが現状です。ペットを飼って、命を育てるという経験をするのは良いことだと思うのですが、「やってみたらできなかった」と途中で投げ出すことはできないし、どうしたらいいか迷っています。
▼命を育てる経験は素晴らしいこと 飼う・飼わないの結論に至るステップが大切
【竹下和男先生の回答】
こんな風に親が迷うということは、子育てというものがまさに「親を親にし、子どもを子どもにするための体験学習」なのだなとつくづく思います。息子さんが犬を飼いたいと言い出したきっかけは何ですか。すでに犬を飼っている友だちの家に遊びに行ったのかな。テレビやYouTube動画の影響ですか。
「ペットを飼って命を育てる」という経験は本当に素晴らしいことです。犬を飼うことに意欲を示しているのなら、「犬を飼うことの“いいこと”と“大変なこと”をちゃんとメモして持ってきて」と課題を与えてください。急ぐことはありません。一カ月くらい取り組ませればいいのです。
本気なら、友だちの意見や図書館での調べも自分から進んですることでしょう。楽しいことばかり思い描いていた子が、少しずつ飼い犬の命に対する責任というものを分かってきます。自分が学校に行っている間のことや、犬を連れて遊びに行けないところはガマンすること、食事と排せつの世話は毎日欠かせないこと・・・。犬の気持ちになって考えるという経験が、息子さんを成長させていきます。「今、ここに犬が居たら、ぼくはどうするか」を毎日、何度も思い出させるのです。その過程で必要なら、飼い主に捨てられた犬の悲しい末路の実態も現実のデータで問いかけるといいです。飼い始めたけれど、「もう飼いたくない」と言い始めた時の犬の手放し方も決めておきましょう。
犬を飼うことは楽しい、かわいいだけではないことを痛感したとき、その約束は犬を飼い始めた時の責任感の強さと忍耐力を息子さんに持たせることになるでしょう。もし「大変そうだから、飼うのをやめる」と言ってきても、「犬の命に責任を持つことの大変さが分かったのね。あなたがもっと大きくなったら飼えるようになるかもしれないね」と褒めてあげてください。
大切なことは、どちらの結論にわが子を導くかではなく、どのようなステップを経て結論にいたるかということです。このステップを大切にすれば、たぶん親子して同じ結論を出すことになると思いますよ。その過程で、親は親になり、子は子になっていくのです。わが子の一カ月間の成長を楽しみましょう。
竹下和男(たけした・かずお)/1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。
#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。