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天才数学者の頭脳戦が舞台に 「アルキメデスの大戦」鈴木拡樹&宮崎秋人【インタビュー】

 数学者の視点から第2次世界大戦を描いた、三田紀房の漫画『アルキメデスの大戦』。2019年には山崎貴監督によって映画化され、大きな話題を呼んだ作品が舞台化され、10月1日に開幕する。主人公の天才数学者・櫂直(かい・ただし)を演じる鈴木拡樹と、櫂を補佐する海軍少尉・田中正二郎を演じる宮崎秋人に、本作の見どころや公演への意気込みを聞いた。

宮崎秋人(左/ヘアメーク:野中真紀子(é clat)/スタイリスト:青木紀一郎)と鈴木拡樹(ヘアメーク:AKI/スタイリスト:中村美保) (C)エンタメOVO

-2020年6月に上演予定だった本作ですが、新型コロナの影響により全公演が中止に。今回、約2年の時を経て、待望の上演となります。改めて、本作への思いを聞かせてください。

鈴木 2年前は稽古すらできない状態で、不完全燃焼のまま終わってしまいましたが、こうして当時とほぼ同じキャストで再び上演できることになりました。リベンジする価値のある作品だと思いますし、全公演完走を目指し、コロナ禍を乗り越えたと思っていただける作品にしたいと思います。

宮崎 まずは、こうしてまたキャストたちが集まって公演ができることにうれしさを感じています。ロシアやウクライナのこともあり、今は2年前では考えられなかった世界情勢で、この作品がより身近に感じることになってしまうのは悲しいことではありますが、こうしたときだからこそ、使命感を強く持って公演に挑むことができると思いますので、しっかりと皆さんにお届けできたらと思います。

-脚本を読んでどんなところに魅力を感じましたか。

鈴木 この時代背景の作品で、日本国内の造船に対する賛否を描いた物語はあまりないと思います。世界規模の大戦が起こっている中、造船という一つのものに焦点を当てているので、そこがこの作品ならではの魅力で、きっと楽しんでいただけると思います。

宮崎 僕はこれまで戦争映画はたくさん見てきて、やはり「戦艦大和」は当時の象徴だったり希望だったりした面もあるのだと思います。それを否定する立場の人物も出てくるのが今回の作品です。角度が変われば彼らの正義も起こった事象の見え方も変わってきます。改めて、戦争について考えさせられる作品だと思いました。

鈴木 本当に考えさせられる作品なんですが、莫大(ばくだい)な量のせりふなんですよね(笑)。映画も見ていたので、もちろん、想像はしていたんですが、度肝を抜かれました(笑)。今回、僕が演じる櫂は、行動するよりも計算してから動くという、理系タイプの人間で、淡々とそのせりふを話します。僕自身は、文系で、こうした役柄を演じるのも初めてなので、真逆な人物を演じることを楽しめるところまで稽古をしていきたいと思います。

宮崎 会話で紡がれていく作品なので、いろいろな人との会話を楽しめたらと思っています。それから、僕が演じる田中は、櫂と出会うことによってどんどん変わっていき、最後は力を合わせて成し遂げようとします。その成長を作品の中でしっかり見せられたらと思いますし、自分を出す男ではないけれども、垣間見える部分はたくさんあるので、そこもいやらしくないように出していけたらと思っています。

-全公演が中止となってしまった20年から2年がたちましたが、この2年間で自身の中でどんなところに成長や変化を感じていますか。

鈴木 先日まで出演していた舞台は、僕にとって約半年ぶりの舞台でした。これまでは、舞台に出演しない期間がこんなにも長かったことはないんですよ。半年も空いたのは初めてだったので、改めて舞台の楽しさを実感しましたし、お客さまが劇場に来てくださることに、そして演劇ができることにありがたさを感じました。なので、そういう思いは、2年前に比べて強くなっているかなと思います。

-緊急事態宣言のときも含めて、半年空くのが初めてだったのですか。

鈴木 初です。新型コロナで全公演中止になったのも、僕は「アルキメデスの大戦」だけなんです。なので、やっとリベンジできると思うと、さらに気合が入ります。

宮崎 僕も全公演中止はこの作品だけなので、リベンジできることはうれしいです。もちろん、2年前に公演ができなかったことは悔しいですが、きっと当時できなかったこともできるようになっていると思いますし、より深みのある田中が演じられるんじゃないかと自分に期待しています。そういう意味では、このタイミングで今作に臨むことができてよかったのかなとも思います。それに、久しぶりに拡樹くんと共演できることに、自分の中では特別な思いがあります。僕が20代前半の頃、拡樹くんと共演したときには、常に支えてもらっていたので、こうしていろいろな経験を経て、また拡樹くんの横に立てるというのはすごく感慨深いです。

-宮崎さんから見た、鈴木さんの魅力は?

宮崎 どんな役を演じても拡樹くんは華があって、目を引く人だと感じます。拡樹くんの輝き方は異次元だと思います。この人の隣で、自分はどう輝けばいいんだ? と思わせてくれる絶対的な人です。

-鈴木さんから見た宮崎さんの魅力は?

鈴木 昔、共演していたときは、同じチームで仲間という役どころだったので、みんなを引っ張っていく熱量や泥くささ、根性を強く感じていました。つらくてもさらに一歩先にいこうとする精神的な強さや折れない心を持っているのは、彼の魅力だと思います。何ごとに対しても忍耐力があり、努力ができる人だというのは、すごく頼もしいです。

-最後に、公演を楽しみにしている人たちにメッセージを。

鈴木 (2年前は)新型コロナで全公演中止となってしまった本作ですが、以前はよく演劇に行っていたけど最近は行っていないという方もぜひこの機会に再びご来場いただけるとうれしいです。戦争を数学という切り口で描いているという、これまでにない熱さのある作品ですので、生の熱量を感じていただけたらと思います。

宮崎 公演を楽しみにしてくださっていたお客さまには2年前に悔しい思いをたくさんさせてしまったので、今回は必ずやり遂げたいと思っています。この2年を経て、今やる意味も大きくなっていますし、見てよかったと思っていただけるものにしなくてはいけないという使命をこのカンパニーは持っているので、ぜひ信じて足を運んでいただけたらと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

舞台「アルキメデスの大戦」

 舞台「アルキメデスの大戦」は、10月1日〜17日に都内・日比谷シアタークリエほか、大阪、静岡、愛知、香川、広島で上演。
公式サイト https://www.tohostage.com/archimedes/