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ジェームズ・キャメロン監督「ナヴィはわれわれの善の部分、つまり一番よいところを表現しています」『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』【インタビュー】

 ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』13年ぶりの続編で、舞台を森から海に移した『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が、12月16日から全国公開される。今回は、ジェイク(サム・ワーシントン)とネイティリ(ゾーイ・サルダナ)との間に新しい家族が増え、家族の愛と絆の物語がエモーショナルに描かれる。公開前に来日したキャメロン監督に話を聞いた。

ジェームズ・キャメロン監督 (C)エンタメOVO

-監督は、デビュー作の『殺人魚フライングキラー』(81)から、海を舞台にした『アビス』(89)と『タイタニック』(97)、そして本作と、ずっと海や水を描いています。水を映像化するのが最も難しいといわれていますが、なぜそこまで水にこだわるのでしょうか。また、今回はなぜ海を舞台にしたのでしょうか。

 確かにCGで水を表現するのは本当に難しいです。ただ、私は海が大好きで、『アバター』のキャラクターも愛しています。そのキャラクターはCGで作り上げられていますが、自分としては水を表現するために苦労する部分に引きつけられたのではなく、物語を伝えたいという気持ちの方が強かったのです。そのキャラクターたちを海に連れて行きたいと思いました。ハードワークになることは予想できましたが、世界でも一流のスタッフが集まっているので、何らかの形で解決してくれるだろうと信じていました。

-この映画に登場する、地球を駄目にして、パンドラを侵略する人類の姿には、監督自身の思いが投影されているのでしょうか。

 これは一作目と同じなのですが、この映画の見方の一つとして、人間とナヴィ双方の視点から見ることができます。ただ、ナヴィは人間の役者が演じていて 人間のスタッフが人間の観客のために作っています。ですから、全て人間が悪いと言っているわけではありません。ナヴィはわれわれの善の部分、つまり一番よいところを表現しています。昔、人間がこうなりたいと思っていた、よりよい形です。

 SF映画のいいところは、レンズを通したファンジーとして、現実から一歩離れて、物ごとを見たり振り返ったりすることができるところです。この映画を見た観客のほとんどが、人間ではなくナヴィの味方になります。彼らのようになりたいと。映画のクレイジーなところは、人間を侵略者として見せることができることです。それは素晴らしく、健全なことだと思います。自然が私たちを見ているような視点で見ることができます。われわれはナヴィになりたいのか、侵略者である人間になりたいのか、奪う者なのか世話をする者なのか、自然から奪って何も返さないのか、といったことが、この映画からの問い掛けだと思います。

-今後の予定を教えてください。

 あと3本作る予定です。考え方としては、始める前に脚本から、デザイン、設計、研究開発、戦略的なことまで、全てを準備して、短い間隔で公開できるようにします。3本目はすでに撮影が終わっていて、今はポストプロダクションの段階で、2年後の公開を予定しています。4本目は、あと少し撮影が残っていて、その後ポストプロダクションに入るので、3年後ぐらいでしょうか。それから5本目にまた2年かかるといった感じです。全てが終わるまでに、あと7、8年はかかるでしょう。『スター・ウォーズ』のように、観客のイメージから消え去ることなく続いていくといった感じでしょうか(笑)。

-今後の3作も全て監督をするのですか。

 もちろん可能であれば。4本目の脚本が一番気に入っています。物語が完結する5本目が2番目に気に入っています(笑)。なので、できれば全てを監督したいのですが、まず家族のことが第一ですから、私や家族が病気になったり、私が作業できなくなったらどうするのかも、考えておかなければなりません。でも、最善を尽くします。スタッフやキャストにも、いつも最善を尽くしなさいと言っています。

-本作はハイフレームレート(48コマ)を使って撮られたということですが、その理由は?

 今回、いろいろと実験してみて48コマが適当だということになりました。特に3Dには効果を発揮します。ただ、全ての場面でハイフレームレートを使っているわけではなくて、より3Dの効果を上げるために、部分的に使っています。水中のシーンは、特に効果的だったので、全てハイフレームレートで撮っていますが、水上のシーンでは2、3割しか使っていません。また、動きの速いアクションでは効果的ですが、日常的な普通のシーンでは必要ありません。ただ、私はあまりスローモーションに興味がないので、ジェイクとネイティリが戦士として動いているときは、ハイフレームレートで見たいと思いました。結論を言えば、3Dや70ミリはフォーマット(方式)ですが、ハイフレームレートはフォーマットではなくツール(道具)だということです。

-3D映画は、一時のブームに比べると下火になっていると思いますが、監督は、今後も3Dで映画を作っていくのでしょうか。また3D映画の将来については、どう考えていますか。

 『アバター』の将来以外は別にどうでもいいのですが…(笑)。最初の『アバター』が公開されたときは、世界に3Dが映せるスクリーンは6千しかありませんでしたが、現在は12万のスクリーンがあります。その半分は中国にありますが…(笑)、そのほかに、世界には6万のスクリーンがあるわけです。それだけの影響力があったということです。

 3Dは、確かに関心度では少し下火になりましたが、プラットホームやユビキタスとしてはどこにでもあることが重要です。なぜなら、私がまた3Dで映画を作っても、デジタルシネマのインフラに、ベースラインとして3Dが組み込まれたので、どこでも上映できるからです。ほかのフィルムメーカーが3Dを作りたくないのであれば、それはそれでいいと思います。私たちはこれからも3Dを使っていきます。

 興味深いのは、この前、最初の『アバター』を再リリースして、2Dと3Dを一緒に上映したのですが、観客の97パーセントが3Dを選びました。これは『アバター』というブランドが、3Dと関連付けられて、最高級品質のものだと理解されている証拠だと思います。

-コロナ禍の影響もあり、観客の映画館離れが叫ばれていますが、映画館で見てこそ輝くこの映画には、映画館に観客を呼び戻すという意図もあったのでしょうか。

 パンデミックが起きて、この映画を完成させられるかどうか分からなくなりました。もし、映画館がなくなったり、観客がいなくなったら、この映画を作る意味があるのかとも考えました。そして、映画製作を続ける中で、本当に観客が戻って来る日は果たして来るのだろうかと思いました。この高額な製作費を懸けた映画を、ストリーミングのために作っているのだとしたら、それは悲劇的なことだとも思いました。

 幸いにも、私たちがとても時間をかけてこの映画を作ったので、今は多くの観客が映画館に戻ってきてくれました。ただ、この映画がちゃんと収益をもたらすかどうかが問題です。パンデミックがあったことで、映画市場の20パーセントが収縮してしまいましたから。

 この映画のストーリーは安全策を取っていません。エンディングもタフでつらいものがあります。経済的な負担を感じながらも、私たちはそうした挑戦をしました。ですので、皆さんには、ぜひ私と一緒に「この映画がちゃんと収益をあげることができますように」と祈っていただきたいと思います(笑)。

(取材・文・写真/田中雄二)

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