-一つ一つの出会いを大切にしてきたことが、今につながっているわけですね。
それがこの仕事の魅力でもあります。別れも早いので寂しさもありますが、いろんな人と出会うことで、知ることができた価値観もたくさんありますから。
-出会いを経て変わっていくという点は、この映画の凛子にも通じる部分がありますね。
そういえば、そうですね。
-その点、広島の人たちと一緒に映画を作った経験は、三浦さんにとってどんなものになりましたか。
この映画に参加してくれたメークやスタイリストの皆さんも広島在住の方で、最初に「映画を撮るのは初めてだから、心配や迷惑を掛けちゃうかも」と声を掛けてくださったんです。でも、そんなことは全く気にならないぐらい、ものすごく人としての気遣いや優しさにあふれた方たちで…。おかげで、人と触れ合う中で、心が温かくなる実感をたくさん得られた現場でした。
-それらを踏まえて、観客にはこの映画をどんなふうに見てほしいと思っていますか。
凛子は「島に行ってみよう」というちょっとした思い付きをきっかけに、それまで知らなかった人たちと触れ合う機会や、新しいことを知る機会を得て、自分の未来に対して少し前向きになっていきます。そんな凛子の姿から、未来に不安を抱いている方や人生の岐路に立たれている方たちが、何かを感じていただけたらいいですね。
-コロナ禍以降、やや希薄になっている“人同士が関わることの大切さ”を思い出させてくれる映画でもありますね。
そうかもしれません。そういう意味では、憲二と出会った凛子のように、自分に変化をもたらす、思いがけない出会いがすぐ隣にあるかもしれませんし、あるいは、今日すれ違った誰かとの間にあるかもしれません。だから、ちょっとだけ自分を開いてみるのもすてきじゃないかな、と感じてもらえたらうれしいです。
(取材・文・写真/井上健一)