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「この映画はトム・ハンクスにとっての『生きる』になったのではないかと思います」 『オットーという男』マーク・フォースター監督【インタビュー】

-オットーは、頑固で不機嫌なキャラクターですが、決して悪い人ではない。この絶妙なバランスを演出するのは難しかったと思いますが、何か意識したことがあれば教えてください。

 まさに、先ほどお話しした陰と陽、光と闇のバランスをどう取るかということでした。それに加えて、この話には現在と過去も出てくるので、スムーズに行き来ができるようにすることを心掛けました。あとは、コメディーとドラマとのバランスも大事でした。なので、編集で試行錯誤をしながら、バランスを見つけていったという感じです。その中で、サウンドデザインや音楽の使い方が役立ちました。とても大変な作業でしたが、楽しい時間でもありました。

-オットーが何度も自殺に失敗するシーンや、オットーが心臓の肥大という病を持つことを知ったマリソルが、思わず「ハートが大きいのね」と笑ってしまい、それにつられてオットーも笑顔になるシーンが印象的でした。シビアな状況でも、人は笑いで救われることがあるということですが、作品にユーモアを込める意味についてどう考えますか。

 笑いは、人を癒やす重要なツールになり得ると思います。暗く悲しい状況の中でも、笑うことで涙を抑えることができます。あのシーンにはダブルミーニングがあって、マリアナがとてもいい演技をしてくれて、僕が望んだバランスを絶妙に表現してくれました。あのシーンは、たとえダークな瞬間であったとしても、そこに一筋の光が現れるということを表現しています。ユーモアは人を癒やすことができるという意味でも、とても重要なものだと思います。笑うことはとても大事なことですよね。

(取材・文/田中雄二)

『オットーという男』