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檀れい「幼い頃の私が感じたドキドキやワクワクを、今度は私がお届けしたい」 スペシャルライブで見せる素の姿【インタビュー】

 宝塚歌劇団の月組と星組でトップ娘役をそれぞれ務め、退団後は映画、ドラマ、舞台などで多彩な才能を発揮してきた檀れい。堺雅人が主演を務めたTBS7月期ドラマ 日曜劇場「VIVANT」では、大事な局面を動かす駐バルカ共和国・日本大使の西岡英子を演じ、大きな話題を呼んだ。そんな檀が2022年の初のワンマンライブに続き、今年もスペシャルライブを開催する。檀にライブの見どころや意気込み、さらには「VIVANT」の裏話などを聞いた。

「檀れい Special Live 2023 Rose」

ー2022年に初舞台から30年を記念して、初のワンマンライブを開催しました。実際にライブを行ってみて、どのようなことを感じましたか。

 30周年ということもあり、構成や選曲を全て自分自身で行ったライブでした。自分のことは自分が一番よく分かっているので、自分で考えたいと思っていたのですが、お客さまに喜んでもらえるのだろうかと、初日は本当にドキドキしました。ですが、始まって2曲歌って、MCをした頃から無性に楽しくなってしまって、私自身が大丈夫、これでいいんだと感じることができたんですよ。みんな私のライブを見るために、こうして時間を作って集まってきてくれているんだと思ったら、変に気負わずに、とにかくこの時間と空間を共に楽しもうと感じられたんです。そうしたら、急に楽しくなってしまって。そこからはワクワクしながらショーをやらせていただきました。

ー30周年までライブを行っていなかったのは、何か理由があったのですか。

 宝塚を退団してすぐに『武士の一分』という映画の撮影に入らせていただいたのですが、そこで今まで舞台でしてきたお芝居と映像のお芝居はまったく違うものだと感じたんです。それで、せっかくなら、それまで宝塚でやってこなかったことや新しいことにチャレンジをしたいと思い、映像のお芝居というのはどういうものなんだろうっていうのを自分の中で勉強したくて、映像中心にやってきたということがありました。

ーなるほど。その中で、ライブを開催してみようと思うに至ったのはどういった理由からですか。

 それまでも舞台作品の中で役として歌うことはあったのですが、自分がライブをするなんて考えたことはなかったんです。ですが、2022年に「題名のない音楽会」から、「東京フィルハーモニーオーケストラの皆さんの演奏で歌を歌ってみませんか」というオファーをいただき、そこで久しぶりに歌わせていただいたら、宝塚時代に音に包まれてステージに立っていた感覚がよみがえってきたんですよ。生の音楽ってすばらしい、また歌が歌いたいと、そのときに強く思い、ちょうど30周年だったこともあり、ライブという形になりました。

ーそうすると、今回のライブは、昨年のライブからつながっているものなのですね。その2022年のライブは、「Ray 光/虹」というサブタイトルが付いていましたが、今年は「Rose」です。タイトルに込めた思いを聞かせてください。

 私の好きな花の1つがバラの花なので「Rose」というタイトルをつけさせていただきました。それにちなんでバラの歌ばかりを歌うというわけではなく、私が好きなこと、好きな人に関する曲をいっぱい集めた内容になっています。

ー具体的には、どのようなセットリストを考えていますか。

 私の好きな人、オードリー・ヘプバーンにちなんだ楽曲、それから私の大好きなディズニーの楽曲を考えています。『リトルマーメイド』の中で、アリエルが陸の世界に憧れて歌う「パート・オブ・ユア・ワールド」という楽曲が、宝塚の下級生だった当時、私の気持ちとすごくリンクしていて、大好きでした。宝塚には入ったけれども、まだまだ何もできなくて、自分自身どうしたらいいんだろうと模索しながらも、光が当たるエンターテインメントの世界で輝きたいと思っていた自分と、陸に憧れ、砂浜を歩きたいというアリエルの思いが、重なって見えたんです。今回は、そうしたお話をしながら歌いたと思っています。

ー今回もライブの演出を檀さん自身が手がけているのですか。

 曲を選んでセットリストを考えたり、MCでどんなお話をするか、それからどんな照明にするかを話し合ったり、ドレスのデザインをスタイリストさんに相談したりしています。今はとにかく見に来てくれたお客さまに楽しんでいただけたらという思いでいっぱいです。私自身、幼い頃に子ども向けの海外の映画を見て、ドキドキワクワクしたのがこのお仕事を目指したきっかけでした。なので、幼い頃の私が感じたドキドキやワクワクを、今度は私がお届けしたい。そして、私自身も楽しめるライブにしたいと思っています。

ー俳優としても大活躍されています。日曜劇場「VIVANT」で演じた西岡英子役も存在感があり、非常に印象深いキャラクターでした。

 「VIVANT」が放送された後は、たくさんの記事で取り上げていただき、とてもありがたかったです。(西岡は)2話から登場したのですが、いい人に見えて、実はバルカ共和国の外務大臣・ワニズにノーが言えない、弱い立場の大使でした。その微妙な表情を表現するのが難しかったです。というのも、この作品は、見終わったらまたもう1回見たいと思う方が多い作品だと思ったんです。きっと何度もリピートして見てくださる方がいらっしゃるから、1回目に見た時は気付かなかったけど、2回目には新たな発見をしてもらえたらと思っていました。それで、「こういうふうに演じていたんだ」とか「ここでこんな表情をしているな」とか、「実はここでワニズと電話で話していたんだ」など、ストーリーが分かってから見ても面白く見てもらえるように、どちらにでも転がるような見え方をしたいと思って演じていました。監督にも何度も確認しながらお芝居をした作品でした。

ー撮影で印象に残っている出来事を教えてください。

 10話で堺(雅人)さんと阿部(寛)さんが私に詰め寄るというシーンで、堺さんがぶつかりそうなくらい顔を近づけて演技をされたんですよ。お互いに絶対に目線を外さないという強い表情で見合っているシーンだったのですが、そのシーンを演じた時に「ああ、日曜劇場だな」とすごく感じました(笑)。いい緊張とすてきなお芝居で、お二人に詰めよられてワクワクしましたね。

ーそうした映像作品での芝居の楽しさ、魅力はどんなところに感じていますか。

 映像の場合、1日のうちの数時間でそのシーンが終わってしまうので、それをもう2度と演じることはないんですよ。舞台の場合、稽古があって、千穐楽まで何度も同じお芝居ができるので、その中でどんどん成長していくのですが、映像はそうした長い時間をかけて成長する場がありません。自身で考えた役作りや、相手との呼吸、相手がどのようなお芝居をするのかという中で、何を感じて、役としてどう表現するのかを本当に短い時間で感じとって考えて、答えを出さなくてはならない。それはとても難しく、大変なことですが、同時に面白いところでもあります。そこに集中すると、自分がどう演じたのか、自分でも分からない時があるんですよ。それは、段取りでも計算でもなくて、突然何かがワッと出てきたような感覚、それが何なのか自分でも分からない。その自分でも思いがけないものが出るというのは、映像でのお芝居の魅力の一つでもあると思います。

ーでは、檀さんが考える、これから先の未来についても教えてください。今後、俳優としてはどのような未来を思い描いていますか。目標や理想像は?

 それは1番難しい質問ですね(苦笑)。私は、これまでも与えられたものを必死でやってきた31年だったので、こうしたい、ああしたいという思いはあまりないんです。自分の要望を伝えたのは、昨年のライブが初めてだったかもしれません。もちろん、すてきな作品に巡り合いたい。すてきな共演者、監督と一緒にお仕事したいという漠然とした気持ちはありますが、うーん、やりたいことがあるような、ないような…。欲がないのかしら。これからは欲深く生きていこうかな(笑)。

ーそうすると、ライブを開催するということは檀さんにとってとても大きなことですね。

 そうですね。役を通して誰かを演じるのではなく、素の姿を皆さまにお届けして、より深く私を知ってもらえる場になると思います。お酒を飲みながら、すてきな演奏に身を委ねて、楽しいひと時を過ごしていただけたらいいなと思っています。

(取材・文/嶋田真己)

 「檀れい Special Live 2023 Rose」は、10月15日・17日に都内・丸の内コットンクラブで開催。