-2世俳優の先輩である緒形さんから見た寛一郎さんの印象は。
緒形 まあ彼は3代目ですけど、とても芝居に対して真摯(しんし)だし、目線がいいし、彼独特の雰囲気というか、オーラがあります。もともと生まれ持った華が備わっているので、この先楽しみだなと思います。華が備わっている人と備わっていない人がいる中で、彼は大きく備わっていると思います。
寛一郎 もちろん緒形拳さんのことは知っていますし、緒形(直人)さんとは、おやじ(佐藤浩市)のことも(祖父の)三國(連太郎)さんのことも話しましたし、ついこの間、息子さんの緒形敦さんともご一緒しました。何かもう一つの文化というか、伝統芸能ではないところでみんなが能動的に役者をやっているのは不思議な感覚になりますね。
-最後の森の中での戦いで矢が飛び交うところが印象的でしたが、あれはどうやって撮影したのでしょうか。
寛一郎 あの矢は全部CGです。矢が飛び交っているふりをしている(笑)。でもそれは撮影のリアルですから。想像してやるのが僕らの仕事でもありますから。
緒形 あそこはエンターテインメントを盛り込んだというか、監督が「あそこぐらいはちょっと派手にやりたいな」と。そこは映画としてよかったんじゃないかと思います。
-今回アイヌに触れてみて改めて感じたことを。
緒形 一番大きいのは、彼らの思想的、宗教的なところです。自然と人との共存の仕方、人の受け入れ方というのは、僕らが学ばなければいけないと思いました。彼らは争うことは極力しなかったし、多様な文化を持ち、自分たちの必要なものしか取らないし、搾取もしない。みんながそうであれば、もしかしたら幸せになれるかもしれない、そういう彼らの精神性みたいなものを僕らは知った方がいいと思いました。厳しく豊かな自然の大地の中で、彼らはそういう生き方を見つけ出して、周りにあるもの全てを神とあがめたり、自然に対する畏敬や畏怖みたいなものも彼らには備わっていて、誇らしい人たちだなと思います。彼らの生き方や、日本の先住民である北海道にいたアイヌの人たちがこういう暮らしをしていたということも、今多くの日本人が知るべきではないかと思います。
-この映画の意義は。
寛一郎 文化を未来に残していくという意義があると思います。アイヌという文化がだんだんと消えつつあり、アイヌという存在自体を知らない人たちもいる中で、この映画を入り口として、アイヌのことを知ってもらうきっかけになれればいいと思います。今もまだこういった問題は世界中で起きています。未来に対して解決の方法を模索していかなければならない。そのための何かを知るきっかけになる映画になってくれればいいと思います。
-最後に観客に向けて一言お願いします。
緒形 見ていただいてどんなことを感じていただくかというのは、こちらも楽しみにしているところです。日本にこういう先住民族がいたんだというところと、この人たちの思想や行動をどのように受け取るか。それは人それぞれです。でも、アイヌ文化がきっちりと根付いていたというところも見てほしいし、映画全体を見て、それぞれの意見で、きちんと判断してほしいと思っています。
寛一郎 こういう人たちがこの地にいたということを知るきっかけになる映画であってほしいということと、これは江戸時代のアイヌの話ではなく、今に通じる話だと思っています。
(取材・文・写真/田中雄二)