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前田公輝、朝ドラ出演を経て「大きく自分のステージが変わったような感覚」 ミュージカル初主演で「多くの人の胸に届く作品に」【インタビュー】

 6歳で芸能界デビューを果たし、NHK教育テレビ「天才てれびくんMAX」で活躍。近年は連続テレビ小説「ちむどんどん」に出演するなどさらに活躍の場を広げている前田公輝。2025年1月10日大阪で開幕し、2月6日から東京で上演される新作ミュージカル「ミセン」では、初のミュージカル主演を務める。原作は、韓国で大ヒットを記録し、その後、ドラマ化もされて「ミセンシンドローム」と呼ばれるほどの社会現象を巻き起こした作品だ。今回、韓国のクリエーター陣によって、日本で世界初ミュージカル化される。前田にミュージカルや俳優業への思い、本作への意気込みなどを聞いた。

前田公輝 (C)エンタメOVO

-ご出演が決まったときの心境を教えてください。

 本当に僕がこの場所をやらせていただいていいのかと思うほどの大作で、うれしい気持ちと同時にしっかりとそのメッセージが伝わるように表現しなければいけないと思いました。

-世界初のミュージカル化というところでも、とてもやりがいのある作品になりそうですね。

 そうですね。ミュージカルだからこそストレートに伝わるところもあると思います。歌に乗せて伝えることで、相手に余白を持たせながらも、「ミセン」のメッセージを深く追求して新しい形でお届けできるのかなと思います。

-原作をご覧になった感想は?

 商社マンの物語にも関わらず、多くの人が共感ができる作品だなと感じました。(原作が発表されてから)何年経っても、実写化されたり、リメークされるというのは、普遍的なテーマが描かれているからなのかなと思います。「ミセン」は、「どちらにも転ぶ石」、つまり「自分が何者でもなく、生きることも死ぬこともできる」という意味の言葉ですが、まさにその「ミセン」でしかないキャラクターたちがこの物語には登場します。(主人公の)チャン・グレは囲碁の世界で生きてきましたが、プロ棋士になる夢を絶たれ、打ちひしがれて、自分はゼロだと思っているところから物語が始まります。物語が進んでいくうちに、チャン・グレは別人のように変わっていきますが、それはビジュアルが変わるということではなく、心のすごく深いところが変わっていったから。チャン・グレが変わっていく姿を描きながらも、人との信頼関係や他者を慮る気持ちがあちこちにちりばめられていて、それがこの作品の魅力でもあり、多くの人の共感を呼ぶところなのかなと思います。何も知らないまっさらな状態で見ても、チャン・グレに自分を投影することができると思います。

-前田さんもチャン・グレに共感できるところが多いですか。

 自分にとっては、ミュージカルに対する思いが共通するのかなと思います。僕はこの作品がミュージカル出演3作目なんです。そこで主演をやらせていただくということに感謝の気持ちはもちろんありますが、それ以上にどうなるんだろうという思いもあります。それは、チャン・グレが何も分からない状態で働き出すときの心境と似ているのかもしれません。チャン・グレは、焦って自分を追い込むわけでもなく、マイペースに人に安心を与える存在でいて、経験がなくても社会にきちんと向き合っていきます。そうしたチャン・グレの姿とミュージカルとして経験が少ない僕のまだまだ吸収していきたいという気持ちがリンクできればと考えています。

-ミュージカル経験が少ないと今、お話しされていましたが、ミュージカルの面白さはどんなところに感じているのですか。

 「天才てれびくんMAX」に出演させていただいていたときに、イベントにも出させていただいていたのですが、それがすごく楽しくて。初めてミュージカルに出演したときは、まさにその体験がカムバックしたような感覚がありました。水を得た魚のように自分が動いているのを感じて、心からの喜びがあって。ただもちろん、同時に難しさも感じています。せりふとして歌うというのがすごく難しいんです。それはきっとミュージカルを続けていく上でずっと戦い続けていかなくてはいけないとは思いますが、だからこそやりがいがあるし、個性が出るところでもあると思います。

-歌のトレーニングはずっと続けていたのですか。

 ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」への出演が決まったときに、どう考えても僕はみんなより前から歌の準備をしなくてはいけないし、そうしても追いつかないだろうと思っていたので、1年前から準備させていただきました。何度も声を枯らして、戻ったらまた稽古をして。「ロミオ&ジュリエット」の公演中は、開演の6時間前に起きて、ストレッチして、ハーブティーを飲んで、湯船に浸かって、体を解してコンディションを保って臨んでいました。1年間かけて準備したとしても、経験のある皆さんにはなかなか追い付いてはいなかったと思いますが、本当に光栄な機会でしたし、うれしい言葉もいただき、自分の中では想像もしていなかった形でした。