-監督はJホラーの第一人者みたいに言われていますが、実はホラーではない映画が撮りたいみたいなことを聞いたのですが…。
中学時代に『エクソシスト』(73)『オーメン』(76)『サスペリア』(77)などを見て衝撃を受けた世代ではありますが、その後、ホラーが大好きだったかっていうとそんなことはありませんでした。たまたま監督になってホラーというジャンルと巡り合ったという感じです。僕がにっかつ撮影所にいた当時は、ロマンポルノが撮られていましたが、ジャンルの制約がある中で、アーティスティックな作品もあれば、職人芸的な作品もありました。みんなが与えられたお題の中で必死になってベストを尽くすというか、職人気質みたいなのがあるので、やるからにはとことんやろうと思うわけです。映画作りとはそういうものかと思いました。だから僕もホラーというお題を与えられてベストが尽くせたのは、にっかつ撮影所で助監督をやった経験が大きかったのかもしれません。
ホラーの大家のウェス・クレイブンという監督が「ホラーは2本まで。3本以上やると断れなくなる」と言っていましたが、僕もホラーから逃げたいと思った時期が長くありました。最初にアメリカに行った時も「ホラーだけはやらない。殺人鬼が出てくる映画ならいいけどお化けは嫌だ」とずっと言っていた。ところが、結局アメリカで撮った映画も、自分の映画のリメークの続編(『ザ・リング2』(05))。皮肉なことに結局ホラーでした。だから、何かホラーから逃げられないのかもしれないと思っていた時期もありました。
でも今回、5年ぶりに大ヒットした映画の続編をやらせてもらって、ある場面をセットの中で撮っている時に、自分の血がたぎるのを感じたんです。「うわ、いいぞいいぞ、もっとやれ、もっと叫べ」とかワーワー言いながら撮っていたんです。その時に、やっぱり自分はホラーが好きなのかもしれないと思い直しました。
-本作も実話の映画化ですが、ずっとホラー映画を撮ってきて、監督自身は怖くなったり、不気味な感じがすることはないんですか。
それは特にはないです。なぜかというと脚本でたっぷり議論をして、こういう表現にしようと決めてから撮り始めて、作っているうちにイケてるという感情が湧いてくるので、やっている時は面白がっているわけです。一番近いのはスポーツ観戦。野球でもサッカーでも、スポーツを見た時に「うわ、いけ」と興奮してアドレナリンがバーっと上がってくるような感覚です。怖いことを楽しんでもらうのが僕の仕事なので、お客さんは純粋に怖いと思ってくれるかもしれないけれど、僕は自分でイケたとか、面白いとか、心の中でにやっとした時に「これで怖いと思ってもらえるかな」と思うわけです。だから映画を撮っている時は普段とは感覚が違います。自分のホラーマインドは、この表現でお客さんを満足させられたかというのが基準なので。どんなにおぞましい表現や特殊メークも、そう思って作っているから、その辺は割と冷静なんです。
-これから見る人や読者に向けて一言お願いします。
前作の終わり方が少しファンタジー寄せみたいになったとか、いろいろとご批判を頂いているのを承知した上で、今回はとにかくホラー映画として怖いと言ってもらえることを唯一無二の目標に掲げました。それで、とにかくど真ん中のストレートを投げるつもりでやりました。『女優霊』(96)や『リング』(98)といった僕の初期の作品にわざと近づけたわけではありませんが、結果としてそうなったところもあります。僕の初期の映画を好きな人たちは、長年Jホラーのファンでいてくれた人たちでしょうから、十分楽しく怖く見ていただけるものになっていると思いますので、ぜひ映画館にお越しください。
(取材・文・写真/田中雄二)
