リコーダーが、子どもたちの未来を切り開くきっかけになるかもしれない――。日本では小学校の音楽の授業でおなじみの楽器を使った教育プログラムが、この夏、インドの公立小学校で始まる。楽器演奏の技術だけでなく、協調性や主体性、コミュニケーション能力といった「生きる力」を育むことが狙いだ。
ヤマハ(浜松市)は7月、インド西部グジャラート州アーメダバード市の公立初等学校24校で、5年生を対象としたリコーダーによる音楽教育プログラムの試験導入を開始すると発表した。期間は2年間で、現地販売子会社のヤマハ・ミュージック・インディアが運営を担う。
今回の取り組みは、2025年に友好協定を結んだ浜松市とアーメダバード市の交流をきっかけに実現したもの。2026年5月に同市教育委員会と締結した覚書に基づき、公立学校で本格的な音楽教育プログラムを展開する。
インドでは現在、国家教育政策「NEP2020」のもと、知識の習得だけでなく、創造性や協働性、主体性といった非認知能力を育てる教育改革が進められている。ヤマハの「スクールプロジェクト」は、その方針に沿って、ペアワークや探究型学習を取り入れながら音楽を学ぶ独自のプログラムを展開。子どもたちは演奏を楽しみながら、自分の考えを表現し、仲間と協力する力を身につけていく。
導入に合わせて、現地の音楽科教員を対象とした研修も実施。授業の進め方や全人的な教育の考え方を学び、公教育全体の質の向上につなげる。
ヤマハは2015年から新興国を中心に「スクールプロジェクト」を展開しており、インドでは2017年から私立小学校の課外活動として導入を開始。現在では全国600校以上に広がり、2023年にはデリー教育委員会、2026年にはナガランド州教育局との連携を通じて、公立学校への導入も進めてきた。
浜松市とアーメダバード市の交流も着実に深まっている。ヤマハは浜松市立城北小学校で異文化理解プログラムを実施したほか、両市の児童によるオンライン音楽交流会も開催。国境を越えて一緒に演奏し、互いの文化を学び合う機会を創出してきた。
ヤマハによると、「スクールプロジェクト」はこれまで世界10カ国で展開され、2026年3月末までに累計約504万人の子どもたちが参加した。音楽教育を通じて「生きる力」を育むという日本発の取り組みは、教育改革が進むインドで新たな可能性を広げるとともに、両国の文化交流をさらに深める役割も期待されている。








