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女性が伸び伸びと活躍する水産現場に 中川めぐみ ウオー代表取締役 連載「グリーン&ブルー」

 高知県須崎市にある、浦ノ内湾。ここで「乙女鯛」というブランド真鯛を育み、加工・販売までを一貫して手掛けるのが小島水産だ。創業者が坂本龍馬の姉・乙女にちなんで名付けた鯛は、その美味しさと美しさで県外からも注文が入る。昨年には大手回転寿司チェーンからオファーを受け、全国店舗の特別メニューとして提供された。

 元々は魚の飼料販売を生業としたが、創業者が地域の名産を作りたいと、5年の歳月をかけて大手飼料メーカーと専用飼料を開発。自然な桜色で、肉質・食味にも優れた、天然に引けを取らない真鯛へと育て上げた。

 そうした中、地域で丸魚を捌ける職人が減ってきたため、近くで獲れた魚も仕入れ、加工・販売するように。小島水産は地域に寄り添い、活動の幅を広げてきた。

 そして創業から約40年となる現在。この記事を書くきっかけとなった人物が、創業者の孫にあたる小屋沙綾佳氏だ。「小さい頃からテレビに出るのが夢だった」と語る彼女は実際に夢を叶え、10代後半は東京でアイドルとして活動。20歳になるころ、地元を恋しく思って帰郷し、家業である小島水産へ入社した。

 最初に小屋氏が配属されたのは、加工場。当時は男性が魚を捌き、女性は補助作業に回るのが当たり前だった。しかし社長だった叔父に勧められ、女性で初めて魚を捌く担当に。男性スタッフたちに「女性にできるのか?」と心配されたが、積極的に教えを乞い、数をこなすなかで速度も精度もどんどん上がっていったという。

 さらには残業が当たり前の職場環境を変えようと、叔父の承認をとって業務改善にも取り組んだ。「1匹ずつ身質を見ながら、手作業で加工するのが小島水産の強み」と考える小屋氏は、機械の導入は最小限のままとし、丁寧かつ迅速な魚捌きの工程を徹底研究。その技術を周囲に教えていった。中には若い女性から指導されることに耐えられず辞めてしまう人もいたが、小屋氏は自ら採用まで行いチームを作り上げていった。現在は加工場の半数が女性で、残業も激減したという。

 そんな小屋氏は現在、会社のPRにも力を入れる。全国の女性漁業関係者が集う水産庁運営の「水産女子」や、高知県運営の「水産女子会」に所属し、EC(電子商取引)やSNS運営にも余念がない。分からないことがあればセミナーなどに参加し、自ら勉強するというから頭が下がる。

 負けず嫌いなんです…と小屋氏は笑うが、SNSを通じて感謝や喜びの声が直接届くようになり、スタッフに共有したら皆がやる気になってくれたと嬉しそうに語る姿を見て、彼女の温かさを感じた。

 小屋氏は女性であることをハンディにせず、かといって過剰に肩肘を張ることもない「自分らしさ」を持っている。水産現場で女性が伸び伸びと活躍していける一つのロールモデルを示してくれた。

なかがわ・めぐみ (株)ウオー代表取締役。「釣り・漁業×地域活性」を軸に日本各地で観光コンテンツの企画・PRなどを行う。漁業ライターや水産庁・環境省などの委員も務める。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.26からの転載】