
-そんな親しい関係を築き上げたお二人に加え、WEBで公開されている本作のプロダクションノートを拝見すると、秋山監督をはじめとするスタッフの熱量もかなり高い現場だったようですね。
松谷 俳優がスタッフも兼任するのが秋山組の特徴で、「慎太郎さんの生きざまを伝えたい!」という思いを全員が持って撮影に臨んでいました。真夏のロケなど、現場では大変なこともありましたが、全員野球で一丸となり、乗り越えていきました。
前田 鷹也さんが言ったように、俳優とスタッフを兼任する方もいて、秋山組のチームワークの良さを感じました。後から合流した僕のことも、「一人にさせない」という空気が感じられ、仲間として受け入れてくださったことが、うれしかったです。おかげで、僕も迷うことなく、皆さんと同じ方向を向いて撮影に臨むことができました。
-そういう皆さんのチームワークが、この作品に結実しているわけですね。では、そんなふうに人を引き付ける横田さんのどんな点を最もリスペクトしていますか。
松谷 初めてお会いしたとき、慎太郎さんが「病気になってから、世のため、人のために何かしたいと心から考えるようになった」とおっしゃっていたんです。「タイガースの選手時代は、ひたすら野球、野球、野球で、自分がレギュラーになることしか考えていなかったけど、脳腫瘍になり、いろんな人に支えられ、助けられていることを、強く感じるようになった。だから、これからは支えてくれた人たちを、自分が支えられるようになりたいんだ」と。実際、慎太郎さんは亡くなる直前まで講演会やYouTubeを通じて、自分の経験を多くの方に伝えていたんです。慎太郎さんのそういう姿勢は、ものすごくリスペクトしているところです。
前田 横田選手の生きざまには、僕も深く感銘を受けました。ただ、横田選手だけでなく、この物語に登場する人たちは、誰もが自分のすべきことを最後までやりきっているんです。皆さんのそういう姿勢は、本当に尊敬できるなと。僕の演じた北條選手も、プロ野球は引退しましたが、今も横田選手の思いを受け継ぎ、諦めずに社会人野球で選手を続けています。そんな北條選手の生きざまにも、胸を打たれました。
-この作品を経験して、ご自身の中で変化を感じたことがあれば教えてください。
前田 初めて実在の方を演じさせていただきましたが、台本を読んでもすごく身近に感じられるようになり、今までとは台本の見え方が変わった気がします。それは、この映画が横田選手や周囲の人たちの生きざまを伝えるノンフィクションの物語だったからだろうなと。おかげで、お芝居に対する距離感が今までよりも縮まったと感じています。
松谷 先日、甲子園でファーストピッチをやらせていただいたとき、甲子園歴史館を見学させていただきました。普段は飾られていない慎太郎さんが入団したときのサイン色紙を、特別に見せていただいたんですが、そこには「日々成長」という言葉が書かれていました。慎太郎さんは、子どもの頃から目標を立てて一歩ずつ前進してきた方で、病気になったときもその姿勢は変わらなかったそうなんです。だから、その色紙が僕には慎太郎さんの象徴のように感じられて。以来、僕も「日々成長」を胸に生きています。
(取材・文・写真/井上健一)
幻冬舎フィルム 第一回作品
『栄光のバックホーム』
11月28日(金)より、TOHOシネマズ日比谷 他 全国ロードショー
製作総指揮:見城 徹 依田 巽
原作:『奇跡のバックホーム』横田慎太郎(幻冬者文庫)
『栄光のバックホーム』中井由梨子(幻冬舎文庫)
脚本:中井由梨子
企画・監督・プロデュース:秋山 純
出演:松谷鷹也 鈴木京香
高橋克典 前田拳太郎 伊原六花・山崎紘菜 草川拓弥
主題歌:「栄光の架橋」ゆず(SENHA)
配給:ギャガ
制作:ジュン・秋山クリエイティブ










